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第一章 [そして悪役は動き出す Operation_Pandora] 早朝、鳥の声が聞こえる。上条当麻は部屋に軽く射し込む日差しと美味しそうな匂いに釣られて目を開けた。 眠そうに目をこすりながら起き上がると上条は違和感を感じる。 「………あれ?」 上条が起き上がったそこはベッドだった。 普通の家ではベッドで起きることに違和感はないだろうが、あの銀髪碧眼の修道女が来てからというもの上条はベッドを占領され、バスタブで寝ていたはずなのに今上条はベッドの上にいる。 「あ、とうま起きた?」 ベッドの隣にあるテーブルでナイフとフォークを両手に持ち、ご機嫌なご様子の我が家の居候が上条に声をかける。 そちらの方をむいた上条は目に映る光景に愕然とした。 「い、インデックスさん?その格好は……どうされたんでせう?」 「え?なにが?」 おどけたような表情を浮かべるインデックスの格好はいつもの修道服、別名『針のむしろ』とは違った、普通の女の子が着そうな普通の服装だった。 ありえない。今まで破れても安全ピンで修復するほどに執着していたあの修道服をインデックスが脱いでいる。 「お前……ホントにインデックスか?」 「そんなに失礼なこと言うとうまにはお仕置きが必要かも…」 ギラリ、と口から歯を覗かせる。 彼女、インデックスの悪癖の一つに噛みつきというものがある。彼女がお怒りモードに突入するとなんでもかんでも噛み砕いてしまうのだ。 それは家主である上条の頭も例外ではない。前々からこの悪癖を直そうと努力している上条なのだがまったく直る気配がなくて困っていた。 「インデックス………こんな下らないジョークで人の頭を噛むのはどうかと上条さんは思いますよ?」 「むう~なんだか今日のとうまは反抗的かも」 なぜだろう。今ならばなんでも出来る気がする。例え、一方通行が五人いても圧勝する自信がなぜか上条にはあった。 「ふ…インデックス……いつまでも上条さんが遅れをとるとお思いか!?」 「ふ…上等なんだよ、とうま」 そう言って適当に構える上条。対してインデックスはゆらりと立ち上がった。その口の中には綺麗な歯が光っている。 「懺悔をするなら今のうちだよ、とうま?私はシスターだから迷える子羊には救いの手を差し伸べるんだよ」 言葉だけは優しいが目が笑っていない。もし、ここで謝ったとしても噛みつかれることに変わりはないだろう。 その言葉に対し、上条は不敵に笑う。 「何を言いますか?上条さんは何も悪いことはしていませんよ?」 今ならばなんでも出来る気がする。もし襲いかかってきたらこの暴食シスターの攻撃を全て避け、スキを見てから毛布でくるんで無力化してやろうと、上条は考える。 そして、暴食シスターは身をかがめ、飛び掛かる体勢に入った時だった。 「こ~ら、インデックス!簡単に人を噛んだらいけないって言ってるでしょ?」 と部屋のキッチンから声が聞こえた。 その言葉で白シスターは動きを止めた。〔言葉だけで〕インデックスは動きを止めた。あの銀髪碧眼、白い暴食シスターが〔人の言葉〕で止まった。 「うう……ううううううううううっ!!」 うなり声をあげながら歯をガチン!!ガチン!!と噛み合わせるインデックス。目が据わっていてとっても怖い。 「でもでもでも!とうまが私に酷いこと言ったんだよ!!」 親の仇を見るような目でインデックスは上条を睨み付けながら抗議する。自分はこの修道女様に何をしたと言うのだろうか。まったく思い当たる節がない。 「いや、待て!!」 なぜここにインデックスと上条以外の人間がいるのだ。それにさっきから匂ってくる美味しそうな朝飯の香りはなんだ。 上条は何もせずに朝飯を作り、インデックスを止めることが出来るようなハイテクメイドロボを買った覚えはないし、買うお金もない。 誰かが上条家のキッチンを使っている。 確認のため上条がキッチンに目を向けると、 「はあ……ま~た当麻はインデックスに変なこと言ったの?いい加減にしなさいよ…」 と言いながら長い髪を後ろで纏めたポニーテールの知らない女の子が美味しそうな匂いをする味噌汁をトレイにのせてキッチンから出てきた。 (誰だ…この可愛い女の子は………ッ!?) その女の子は制服の様なものの上にエプロンという夢のような姿だった。男のロマン、『女の子のエプロン姿』。その破壊力は着ける着けないで大きく変わる。 と土御門が力説していたのを聞き流していた上条は今、本当の意味でその言葉を理解していた。 (だ、ダメだ………エプロンの破壊力がこれほどとは…っ!) もうどうしていいか理解できない。上条はボウと放心したように女の子を見つめる。 茶色い髪に茶色い瞳、化粧は必要ない程度にデフォルトで整った顔立ち。着ている制服を見ると、常盤台中学のものだろうか。 (………………………あれ?) 誰かに似ている。 その疑問について考える前にインデックスが口を開いた。 「もっと言ってよ、みこと!!とうまはみことの言うことしか聞かないんだから!!」 みこと、この女の子をインデックスはそう呼んだ。はて、どこかで聞いたことのある名前だ。 (みこと……ミコト………美琴…………御坂…美琴?) 「お前……御坂か?」 おそるおそると言ったふうに上条がポニーテールの少女に問いかけると、少女は笑って、 「当麻が私のことを『御坂』って呼ぶの久しぶりね。もしかして、美琴ちゃんのエプロン姿が可愛すぎて記憶が飛んじゃった?」 と上条の問いかけを肯定した。 どうやらここにいる少女はあの御坂美琴らしい。 その状況を把握して、上条は携帯を取り出した。 「どうしたの、とうま?」 「やるべき事を見つけたんだよ、インデックス」 そして、出来れば押したくなかった番号をプッシュする。 「もしもし?警備員(アンチスキル)ですか?すぐに来てください。不法侵入です」 瞬間、インデックスが大きく口を開けて襲いかかってきた。 「とうまあああああああああああああああ!!」 「なぜお前が怒る!?お前ら仲悪かったんじゃ…ぎゃああああああああああ!!」 「まったく…ホントにぎやかね」 上条の視界が、日光を反射して光る歯で覆い尽くされた。 8 35 AM 「どうわあっ」 そんなすっとんきょうな声を上げて、上条は夢から覚めた。 布団から起き上がるとそこはいつも見慣れたバスタブだ。 「今のは……夢?」 夢にしては妙にリアルだった。なんというか、その場特有の臨場感というか焦りというか。 とにかく違和感がでるのを違和感に感じるほどにその夢は自然だった。 何気なく、上条は時計を見た。 「やっべ!!今日は10時から御坂と約束があったんだった!!」 遅れたらビリビリだ。そんな不本意なお仕置きを受けたくない。 そう思って風呂のドアの鍵を開けた瞬間。 銀髪シスターが口を大きく広げて襲いかかってきた。 「お腹すいたんだよおおおおおおおおお!!」 「ぎゃあああああああああああ!!インデックス!ご飯なら今から作るからもう少し我慢を………ッ!!」 「もう充分待ったんだよ!?何回何回呼び掛けてもとうまが起きても来なくて心配してたんだから!!」 「ごめん!ごめんなさいだから頭を噛まないでえええ!!」 不幸だあああああ!!と少年の叫びが学生寮に響いた。 ? AM 「アレイスター。お前は何を考えているんだ?」 「何のことかな?」 「とぼけるな…また魔術師が学園都市に侵入したぞ……ッ!!」 「落ち着け土御門。今さら騒いだところでどうすることもできまい」 「そんなに落ち着けるような相手じゃない!!相手はローマ正教の『神の右席』候補者だぞ!」 「学園都市は『神の右席』なる前方のヴェントを撃破している。候補者など恐るに足りん」 「あれだけの被害を出しておいて…」 「その『被害』を最小限に抑えたいなら君が頑張ればいい」 「キサマ……ッ!!ヤツラの目的は『幻想殺し(イマジンブレイカー)』だ…お前はそれをわかって……」 「理解しているさ」 「ならば何故手を打たない!?学園都市内にいる妹達(シスターズ)はほとんどヤツラの手に落ち、それを…」 「理解している、と言っているだろう?私のプランの短縮のために使えるんだ。それを利用しない手はない」 「そこまでして欲しいか…『虚数学区・五行機関』」 「…………………………………」 「クソッ……お前は戦争を起こすつもりなのか!?」 「それは君の努力次第だ。頑張ればこの前のように死者を出さないことができるかもしれんぞ?」 10 36 AM 「くっそ~また遅刻だ!」 上条は美琴と約束している場所、あの自販機の近くのベンチを目指しながら走る。 あの後、インデックスに朝食を作り、ご機嫌になったところを見計らい、 『今から御坂と遊んでくるから、お留守番しててくれ』 と言うとまた頭をかじられた。何がいけなかったのだろうか。きちんと朝食は作ったのに。 しかも、ただでも遅れているのにいつも使う道が通行止めになっていた。何やら爆発事件があったらしい。 学生寮の隣で爆発事件なんて誰が何のためにしたのだろう。現場をチラッと見たら、道路に亀裂が走っていたり、木が何本か折れていた。 (最近は物騒な事件が多いな……) そう考えながら上条は約束の場所へと走り続けた。 10 49 AM 天候は曇り。 そのためもう朝だというのにその路地裏には光が入らず、まるで夜のような暗闇が通路に続いていた。 コンクリートとコンクリートに阻まれた、直線のような道。そのコンクリートの壁はボロボロで整理されていない。 暗い道だからという理由からか常日頃から人が通らないようで、まるで長らく掃除をしていない体育館倉庫のようにホコリが充満していた。 そんな道のほこりを舞い上げながら数人の人間が走り抜ける。 逃げる一人の少女と、追いかける数人の黒ずくめ達。 黒ずくめ達は一般人が手に入れられると思えないようなサブマシンガンを持ち、少女を追いかける。対して、追いかけられる少女は何の武器も持たない普通の少女だった。 いや、普通というのは少し違うだろうか。学園都市の能力開発による成果とも言うべき能力を持つ少女。 というところも普通ではないのだが、ここ学園都市では特におかしいことではない。 普通ではないおかしな点。路地裏の道を走り抜ける少女には約1万人の姉妹がいる。 能力名[欠陥電気(レディオノイズ)] 名称[妹達(シスターズ)] とある実験で造り出された、[超電磁砲(レールガン)]御坂美琴の劣化型クローン。 (ここで……こんなところで捕まるわけにはいかない、とミサカは決意を新たにし必死に足を動かします) 学園都市にいる妹達は今、路地裏を走っている少女以外すべて捕まってしまっていた。 ちょうど、身体の調整のため病院を抜けて散歩に出ているときだった。一人のミサカが黒ずくめに捕まった。 妹達は能力で互いの脳をリンクさせ、記憶を共有することができる。その名も『ミサカネットワーク』。 『ミサカネットワーク』によりミサカの一人が捕まったのを知るのに時間はかからなかった。 捕まったミサカの記憶により、黒ずくめ達の狙いは学園都市に残るすべての妹達であることが判明。 病院に迷惑をかけないように学園都市に残るミサカの全ては病院から抜け出した。 その後、10時間が経過している。 逃げ出したミサカはほとんどが捕まり、残るは路地裏を走る少女のみ。 その最後の少女さえ、すでに捕まるのは時間の問題だった。 「クッ…………!?」 少女が曲がり角を曲がるとそこは行き止まり。 行き止まりに一瞬思考と動きが停止する。 その一瞬の間に黒ずくめの一人が少女に追い付き、地面に身体を叩きつけた。 「グ……ウウ……ッ!?」 少女は手足を動かし抵抗するが、 「動くな…死ぬぞ?」 黒ずくめが頭にハンドガンを突きつけてきたため動きが止まる。 (……………こんなところで…) 死ぬわけにはいかない。 ――『俺はお前を守るためにここにたってんだよ』 とある少年が助けてくれた命を、 ――『お前は世界にたった一人しかいねえだろうが!』 とある少年が教えてくれた大切なものを、 ――『勝手に死ぬんじゃねえぞ』 失うわけにはいかないのだ。 「く、あぁぁぁあぁぁああああぁぁぁ!!」 バチン、という音が少女の身体から響いた。 少女のもつ能力が発動し、青白い電流が辺りに撒き散らされる。 否、撒き散らさされるはずだった。 ズガン!!という鈍い銃音が路地裏に響き、銃弾は正確に少女の右腕を撃ち抜く。 「あ………ぐぅ…」 右腕に響く痛みで少女の能力が中断させられた。 「動くな、と言っただろうが…」 面倒くさそうに銃を片手に黒ずくめの男が呟く。 しかし、右腕を撃ち抜かれても少女は諦めない。諦めるわけにはいかない。 すると他のさっきまでの逃走劇で少女が少しずつ引き離していた黒ずくめ達が追い付いてきた。 合計、10人くらいはいるだろうか。 これで、さらに状況は絶望的となる。しかし、少女は諦めない。 例え、右腕を撃ち抜かれようとも、手足を引き千切られようとも、少女は絶対に諦めない。 (捕まるわけには……いかないッ!!) 少女は唇を噛み締める。 何か。 何かあれば。 この絶望的な状況を突破できる何かが。 もうこの際なんでもいい。 あの少年やお姉様でなくとも、不良でも先生でも風紀委員(ジャッジメント)でもいい。 この絶望的な状況から助けてくれる何か。 この絶望的な状況から助けてくれる誰か。 「誰でも、何でもいいから…」 震える声で少女は呟く。 過去に自分の命をどうでも良いと思っていた少女は誰ともわからない、いまだ見たこともないものに救いを求める。 「ミサカを助けて……ッ!!」 恥も外聞もないその叫びが路地裏に響いた。その叫びは自分勝手な願い。自己中心で、意地汚くて、自分しか得をしない醜い願い。 しかし、その叫びはとても純粋だった。 しかし、その叫びはなぜか透き通った音で路地裏に響いた。 しかし、その叫びはまるで小さな女の子が泣いているような印象を受けた。 そして、その叫びを一人の少年が確かに聞いていた。 轟ッ!!と少女の周りに凄まじい勢いで風が吹き荒れる。 「な、なんだ!?」 という黒ずくめ達の叫びを打ち消すように風はうねりをあげた。 風速一二〇メートルの疾風の槍が黒ずくめ達を襲う。 数秒後。 その場で意識を保っているのは二人だけとなっていた。 地面に押し倒される少女とその少女を地面に押し倒す黒ずくめの男。 その二人の周りには黒ずくめ達が意識を刈り取られ、地面に転がっていた。 「の、能力……?能力者?いったい…誰が……」 心の声がそのまま出ているかのように男が呟く。男は少女に銃を突きつけたまま、周りを忙しく見渡す。 (か、風……?) 対して、少女はいたって冷静に状況を分析していた。 風。 そんなものを操ることのできる能力者はたくさんいるだろう。 しかし、少女の思う人物は一人しかいなかった。 間違い、勘違い、思い違いかもしれない。 それでも、少女はこの時一人の白い少年のことを思い浮かべていた。 カッ…と路地裏に足音が響く。 足音がした方向に男が勢いよく振り向き、思わず少女に突きつけていた銃をそちらに向けていた。 行動からどれだけ男が焦っているかわかる。 そして、その焦りは足音のした方を向いた瞬間に恐怖へと変わった。 「ひ……ィ…ッ!?」 男の喉が急激に乾上がる。 こちらに歩いてくる一人の『怪物』がいた。その『怪物』は異常なまでの白い肌と髪を持ち、普通ではありえない紅い目をしていた。そして、その白さを強調するような黒い服。 白濁の『怪物』が引き裂かれたような笑みを浮かべ、こちらに歩いてくる。 その足音の一つ一つが死刑へのカウントダウンのような錯覚を男は覚えた。 このままじゃ、殺られる。 死にたくない、という感情が男の思考を支配する。 そこから逃げるための最善策は少女を人質にとることだという考えに男がたどり着くのにそう時間はかからなかった。 「くっ…来るなあぁ!!」 男は少女の髪を掴み、無理やり立たせて少女の頭に銃を突きつけた。 「…………………………………」 その行動で白い少年の足が止まる。 「ひ、ひひははあ…」 少年が足を止めたのを見て男は泣きながら無理やり笑うような表情を浮かべた。 効いている。 そう男は思った。 この作戦はあの学園都市最強に確かに効果的だ。このままいけば、男は助かるかもしれない。 あの『怪物』から無傷で逃げることができるかもしれない。 そこで男は気づいた。 この状況を利用すれば。 うまくやれれば。 もしかすると、この『怪物』を殺せるのかもしれない。 「は、はは…ははは…」 乾いた声を男があげる。 そう、考えれば簡単なこと。 逃げれるのなら。 言うことを聞かせることができるなら。 殺すことだってできる。 殺すことができるなら… 「なァ……お前、ジブンが何やってンのか理解してンのか?」 男の思考をさえぎるように白い少年が口を開いた。 それに対して男は、はあ?と呟く。 「理解もなにも…お前こそ自分のおかれてる状況がわかってるのか!?適当なこと言ってるとコイツの頭ぶっ飛ばすぞ!!」 男は少女の頭に銃を叩きつけるように当て、白い少年へと叫ぶ。 「あ、う…う…」 少女のうめき声が男の気分を妙に上昇させた。 「おらぁ!この人質が見えねえのか!?言うこと聞かないとこの女の子死んじまうぞ!!」 男は顔に気味の悪い笑みを貼り付けながら言葉を吐く。 その言葉に白い少年は呆けた表情を一瞬だけ見せると、吹き出すように笑い始めた。 「ギャアッハハハハハハハハ!!」 「な、何がおかしい!?」 その意味のわからない挙動に男が叫んだ瞬間だった。 ダン!!と白い少年が勢いよく地面を踏む。 たったそれだけで。 それだけの動作で男の後ろにあった換気扇が爆発した。 「な、ああぁ!?」 突然の出来事に男は一瞬だけ意識がそちらに向く。 その一瞬が命取りだった。 少年が足を踏み込む。 すると、バゴン!!とコンクリートを爆散させながら少年は弾丸のように駆けた。 両者の距離は一秒に満たない時間で〇になる。 息を呑む暇もなく、声をあげる暇もなく、男は少年の細い腕で地面へと叩きつけられた。 「ぐ、ハァ…ァ……!!」 触れれば折れてしまいそうな細くて白い腕で顔を押さえつけられながら、男は後悔していた。 効いていた。 男はそう思った。 今の作戦はあの学園都市最強に確かに効果的だった。 しかし、その効果は少年の怒りをあげるだけものでしかなかった。 「さァて…お前、わかってンだろ?」 手を出すべきではなかった。 今、男を押さえている超能力者だけでなく、 「テメェらのくだらねえ思惑かなにか知らねェけどなァ…」 あの少女にも。 手を出すべきではなかったのだ。 「人が護りてェもンに手ェだしてただで済むわけねェってことぐらいよォ!」 男の悲鳴が誰もいない路地裏に響いた。 「ふン…」 一方通行(アクセラレータ)は首筋の電極のスイッチを通常モードに戻して、呟いた。 「オレも人のこたァ言えた義理じゃねェな…」 男だったものから目を離し、御坂妹の方を向く。 「大丈夫か?その右腕、病院に…」 「そんなことより…」 アァ?と一方通行は御坂妹の顔を見る。 「お姉様が………お姉様が大変なんですと、とミサカはあなたに助けを求めます!!」 その顔は泣いている少女のようにぐちゃぐちゃに歪んでいるように彼には見えた。 10 52 AM 天候は曇り。 今にも雨の降りそうな天気にほとんどの人が傘を持って歩いていた。 (……俺も傘持ってくればよかった) 肩で息をしながら上条は美琴と約束した、あの自販機のある公園にたどり着いた。 この天候のためかいつも見る子供たちや学生の姿がない。 そんな天候を見て、上条は憂鬱な気分になった。 息を整えながらポケットから携帯を取りだし、時刻を確認する。 「………………10 52?マジかよ…」 遅刻だ。 約束の時刻は10 00。 現在時刻は10 52。 完全なる遅刻。 怒られるのを覚悟しなければならない。 「やっぱ…おごらされたりすんのかな…」 小さな財布を取りだし中身を確認してみると、雀の涙ほどの金額しかないことに上条は泣きそうになった。 今日一日だけ遊ぶ金すらも危ないのに、おごらされたりしたらそれこそ終わりである。 もし、そんなことになったなら、 『インデックス~今日から次の支給日までご飯はお茶漬けだよ~』 『ホント~?毎日毎日お茶漬けなんて私は幸せなんだよ~』 『あはは~噛みつくなよインデックス~』 なんてことになりかねない。 (あ、マズイ…想像しただけで頭が痛くなってきた…) 古傷が痛むぜ…と上条は左手で自分の頭をさする。そう簡単に朝の一撃は忘れられないようだ。 そんなことをしている内に自販機の前に着いた。 約束の場に怒り狂った電撃姫が君臨していると予想していた上条だが、 「あれ?」 そんな予想に反して、自販機の近くに美琴はいなかった。 (集合場所って…ここで良かったよな?) 携帯のメールボックスを開き、美琴とのメールを確認する。 「集合時間は10 00、集合場所はこの前の自販機の前…っと。間違ってねえよな」 もしかして帰っちまったかな、と上条は嘆息しながら、携帯の電話帳を開き『御坂美琴』にカーソルを合わせた。 上条としても今日という日を楽しみにはしていたのだ。 それを自分の不手際で潰すなんてことを上条はしたくなかった。 (謝って許してくれるかわからねえけど…やらないよりはマシだろ) そして、上条は電話の『発信ボタン』を押そうとした時だった。 ドン!と上条は誰かが抱き着いてきたような感触を右腕に感じた。 「へ!?」 抱き着いてきた人物は、 「アンタ、デートに遅れるなんてヒドイじゃない?」 上条の右腕を強く抱き締めて、頬を膨らませている少女だった。 「う、おぉぉい!お前、御坂か?それにデートって…」 右腕に女の子のあらぬ部分が当たっているため、上条は顔を真っ赤にして言葉を紡ぐ。 そんな上条を見て、 「私以外の誰に見えるってのよ?それに女の子と遊びに行くなんてデート以外のなにものでもないでしょう」 意地悪そうな表情を浮かべ少女、御坂美琴はそう言った。 「み、御坂!腕を離してくれ!む、胸が当たってる、胸が!」 「ダメよ。それじゃあ罰にならないもん」 美琴は上条の腕を引っ張りながら笑う。 「遅刻しておいてなんの罰もないわけないじゃない」 その笑みに上条は思わずドキン…とする。 (こいつ…いつもとキャラ違いすぎるだろ……ッ!?) さあ、行くわよ!!と美琴は上条の腕をさらに強く引っ張った。 「待て!どこに行くんだ!?連れていく場所ぐらい教えてくれ!」 「秘密よ。着いてからのお楽しみってやつ」 ギャアギャア、と騒ぎながら二人は公園から立ち去った。 公園に人の気配はなく、妙な雰囲気が辺りを支配していた。 11 07 AM 「な……ンだとォ…」 一方通行(アクセラレータ)は目の前の少女、御坂妹が話した内容にかろうじて言葉を紡いだ。 「ってこたァ、ヤツラの目的ってのは…」 「おそらく貴方の考えていることで間違いはないでしょう、とミサカは相手の心理を読み取ります」 クソッ!と吐き捨てるように一方通行は呟く。 御坂妹から聞いた話は一方通行にとって、耳を疑うようなものだった。 敵対勢力名〔パンドラ〕 作戦名〔希望ト絶望ノ箱(オペレーション パンドラ)〕 そして、その目的と手段。 予想外だった。 一方通行が予想していたことの数倍上をいくような内容ではない。 予想はできるがありえない、と思ってしまうようなことを〔パンドラ〕は実行しようとしている。 「なら…いま超電磁砲(レールガン)は〔パンドラ〕の作戦どォりに…」 「はい、おそらくお姉様は何も知らずに街を歩いているはず、とミサカは確信に近い予想を伝えます」 「打ち止め(ラストオーダー)はァ?」 「心配は必要ありません、とミサカはロリコンを冷たい目で見つめながら自分の予想を述べてイタイイタイ!無言チョップを止めなさい、とミサカはあなたにお願いします」 「…………………………………」 一方通行は無言チョップを止め、空を仰ぐ。 かろうじて見える空は雲しかない殺風景なものだった。 「あなたは他の妹達を助けに行くのでしょう?ならばミサカも協力します、とミサカは提案して………」 「まずは病院だァ…その手じゃ、軽いものでも持てやしねェ」 「な………ッ!?」 一方通行の言葉の意味を数秒をかけて理解し、その言葉に御坂妹は怒りを覚えた。 思わず身を乗り出しながら、 「そんなことをしている暇はありません!とミサカは…」 「足手まといだってのがわかンねェかなァ?」 仕方なく、といった表情でため息混じりに一方通行は言った。 御坂妹はその言葉に口をつぐむ。 おそらく、一方通行は御坂妹に傷ついて欲しくないのだろう。あの冷たい表情の裏にそんな気遣いがあるのだろう。 そして、実際に足手まといだということを御坂妹は自覚していた。 御坂妹は悔しさに唇を噛む。 護りたい世界を自分で護れないと言われたことが御坂妹には悔しくて仕方がなかった。 ふざけるな、と噛んだ唇から血が流れる。 キッ、とにらみつけるように御坂妹は一方通行に視線を向けた。 「ミサカにも、やれることはあります…」 「あァ?」 「ミサカにだってやれることが、やりたいことがあるんです!それをあなたに止められる理由はありません!!」 感情が乏しいはずの顔に『怒り』という明確な表情が浮ぶ。 そんな御坂妹を見て、一方通行は唇の端をつり上げながら思う。 自分は間違っていなかった。 一万の妹達(シスターズ)を殺した自分が残り一万を護ろうとしたことに間違いはなかった。 一万の妹達を殺したことをよかったとは言わない。 しかし、残り一万の妹達を救ったことに間違いはなかったと一方通行は自信を持って言える。 そう言えるほどに目の前にいる少女は『善人』だった。 そんな『善人』が『悪党』についていく必要はない。 「何もねェよ…」 心の中で考えていることをおくびに出さずに、一方通行は御坂妹を見る。 「お前にできることなンて、何一つ」 胸がチクリと痛む。 「ありはしねェンだ」 「…………………………………」 御坂妹はその言葉を聞いても一方通行を真っ直ぐ見続けた。 一方通行の瞳に御坂妹が映る。 その表情は意志の強い姉を思い出させ、一方通行は心の中で舌打ちをした。 (妙なとこばっか似やがってェ……) そして、御坂妹が口を開こうとして、 「やることならさ。君にはたくさんあるよ」 そんな声が路地裏に響いた。 一方通行はゆっくりと振り返り、やってきた『敵』を見据えて、 「予想より早かったな…〔パンドラ〕」 そう呟いた。 二人の少年少女が道を歩いてくるのが見えた。 少年のほうは見たことのないブレザーを着ており染めでもいるのかボサボサの髪は緑。 極め付きには無表情。 あったばかりの妹達を思い出させる、感情のない顔だった。 対する少女はスポーツ少女のような短い髪。 ある程度デフォルトで整った綺麗な顔。 明らかに日本人ではない、青色の目をしていた。 そこまではまだいい。 問題はその服装だ。 まるで劇のような。 世代の違う時代にいるような服装だった。 「………あれが一方通行だよ」 無表情な顔の少年が唇だけを動かして呟いた。 その言葉に少女はニヤリと笑う。 「君が学園都市最強の能力者?弱そうだね~そんな細い体してさ」 一方通行は少女の言葉に対して、小さく笑って答えた。 「お前がローマ正教が開発した能力者?可愛い可愛い女の子がこンな暗いとこに来たらだめだろォ」 「能力者?何を言ってるのかな?ボクら魔術師と、無粋な脳開発なんかを一緒にされるなんて侵害だな」 そりゃとンだ失礼を、と一方通行は耳をほじりながら答えた。 そんな一方通行の仕草に少女はピクリと眉を動かす。 「………………ミーナ」 「うん…わかってる」 何かを確認するようにして二人は言葉を交わした。 「キミは面白いね…殺すのが惜しいくらいだよ」 「なァに言ってンのかわからねェなァ…テメェみたいな三下にオレが殺れるわきゃァねェだろ」 少女はポケットに手を入れながら、 「それはやってみないと…」 その言葉は最後まで続かなかった。 一方通行が懐から出した拳銃で発砲したからだ。 バァン!という銃声と共に少女の頭が弾けたように後ろにのけぞり、よろよろと数歩だけ足を後退させる。 「………あァ!?」 しかしそれだけだった 一方通行は銃口を少女に向けたまま目を見開く。 少女が倒れない。 銃弾で頭を撃ち抜いたはずの少女は傷一つない顔で薄い笑みを浮かべた。 「人が話してる途中に撃つなんて、悪だね~。障壁を作ってなかったら死んでたよ?」 そして、少女は手をいれたポケットから手を出した。 その手の中にはテニスボールくらいのガラス玉が一つ握られている。 「仕返し♪」 少女はそのガラス玉を下投げで一方通行の方に放った。 綺麗なガラス玉は周りのものを写しながら放物線を描くようにして宙を舞う。 「大いなる五大元素の一つ『水』」 少女は笑いながら独り言のように呟く。 「その役は罪を洗い流すことっていうのが有名だけどね。洗い流すことのできないほどの大罪を犯したときには…」 少女はここで言葉を区切り、一方通行に満面の笑みを向けた。 「『水』そのものが断罪を与えるんだよ」 瞬間―――――― ゴキュッ!とガラス玉が破裂した。 破裂したガラス玉の中から信じられないほどの質量の水が溢れだし、大きな津波を形成する。 「この汚れた世界に生きて、ローマ正教の信徒にならないことがすでに神への裏切り」 少女は何かを掴むように頭上に手を伸ばす。 「異教徒のクズに洗い流せる罪なんてないさ!」 それに呼応するように水の流れが渦を巻く。 周りのものを巻き込みながら水の壁が天を突くかのように舞い上がる。 「最初で最期の交渉。そこにいるクローンを渡してくれないかな?」 人間すら軽く飲み込む水流の壁が一方通行と少女の間で待機した。まるで見えない壁に阻まれて通れないような。 水流は一方通行と御坂妹を飲み込みそうに渦を巻いている。交渉を無下にすれば少女はすぐに壁を消すだろう。 おそらく、こんな水などを喰らっても一方通行は傷一つつかない。 しかし、今は御坂妹がいる。一方通行の能力は自分を守る最強の盾だが、他人を守るどころか傷つけてしまうものだ。 そんなもので御坂妹を守れるのか、と少女は聞いているのだ。 これ以上御坂妹を傷つけたくなかったらおとなしく渡せ、と。 しかし、見えない壁を間に挟みながら一方通行は少女にこう言った。 「寝ぼけたこと言ってンじゃねェよ」 死んじゃえ!!と笑いながら少女は叫ぶ。 見えない壁から解放された、コンクリートを簡単に粉砕する高さ5メートルの水の壁は獲物を見つけ、歓喜の声を上げながら一方通行と御坂妹のほうに雪崩れ込んだ。 11 12 AM 上条は美琴に連れられ一つの建物の地下駐車場にたどり着いた。 「御坂…ここに何かあるのか?」 面倒くさそうに声を出しながら、上条は美琴に尋ねた。 上条は疲れきっていた。 その理由は単純。美琴が上条の右腕に抱きつくようにくっついてきたからだ。 普通高校生、上条当麻には精神的ダメージが大きすぎる。 第一に周りの目が痛い。美琴が有名な常盤台の制服を着てるからか周りから好奇の目でみられ、後ろ指を刺され上条は『もういやぁ~!』と叫びそうになった。 そんな上条のことなんて知らない美琴は少し目を伏せながら問に答える。 「アンタに…ううん…上条当麻に聞いて欲しいことがあるの」 「やっと、自分の日ごろの行いの悪さを自覚したのか。よしこい!誠意ある謝罪をきっちり受け止め―――」 言い終わる前に美琴は上条の顔をグーパンチした。 グフォ…、と上条の口から声が漏れる。 「………空気読みなさいよ、このバカ」 「すいませんでした」 上条は頬を左手でさすりながら謝罪の言葉を口にする。 美琴はそんな上条を見て、もう、と頬を膨らませた。 「あんたのせいで雰囲気台無しじゃない、どうすんのよこれ?」 「そんなこと言われても……、」 雰囲気ってなんのだよ、と上条はうめき、 「そもそもなんでこんなとこまで来たんだ?駐車場なんてなんの楽しみもないだろ?」 まさか人気のない場所で上条さんをやる気ですか、と一人戦々恐々する。 そんな上条を見て、美琴はわざとらしいため息を吐く。 「なんでデートに来てまでケンカしないといけないのよ?」 「そうだ、それを聞きたかったんだ」 上条は先ほどから思っていたことを口にする。 「いつお前と俺が恋人同士になったんだ?意味がわから―――」 口を塞ぐように再びグーパンチが飛んできた。心なしかさっきより痛い。 「どうなったらそんな結論になんのよ…、」 「いや、だってデートって言えば恋人同士がやるもんだろ?」 上条は知識の中にある『デート』という単語の意味を引きずり出す。 「お前がデートって言うからおかしいと思ってよ」 「別に恋人同士じゃなくてもデートで言うじゃない」 美琴が空いた手で髪の毛をいじる。 「そんなことも知らないの、常識じゃない?」 ぐぅ、と上条は言葉を詰まらせた。 日ごろから電撃飛ばしてくるお嬢様に常識がどうこう言われたくない。 「ともかく、私は当麻に言いたいことがあるの!!」 そう言うと美琴は上条の右腕から手を離して正面に立ち、上条を見据える。 「誰にも聞かれたくないから……上条当麻だけに聞いて欲しいから」 顔を赤らめながら言う美琴に上条は再びドキンとした。 (御坂が……御坂が可愛く見えるッ!?) 「目を閉じて」 「へ?」 「はやくッ!!」 うええい!とうろたえながら上条は目を閉じた。視界が暗闇に覆われる。 「ねえ…アンタは私の言うことを聞いてくれる?」 「で、できる範囲でなら」 そう…と美琴は呟いた。 (なんだこれ?なんだこの雰囲気?なんなんですかこの状況はああああああああああ!?) 手から汗がにじみ出てきた。 視界がゼロなため一層焦りを加速させる。 「なら…一つだけ聞いてくれないかしら……ホントに大事なことを一つだけ」 震えるような声で美琴は話す。 目を閉じた上条には美琴の姿が見えないが、たぶん震えているのだろう。 見えない美琴は拳を握り、まっすぐと上条を見ているのだと予想できた。 ここまで来て、やっと上条は美琴が何をしたいのかを理解した。 (雰囲気って……そういうことかよ) 「ああ。聞いてやる。悩みがあるなら俺が聞いてやるから」 「ホントに?」 美琴は今にも泣きそうな声を絞り出す。 上条は見えない美琴に笑いかけた。 「ホントだ。約束する」 手探りで美琴の肩に右手を置くと、右手から伝わる感触は思った通り震えだった。 「じゃあ…言うよ?」 美琴が肩に置かれた上条の右手を握る感触がした。 「私、御坂美琴は…」 上条は胸の高鳴りが大きくなっているのを自覚する。 (俺が緊張してんのかな…?) 心の中で苦笑する上条。 そんな上条を尻目に美琴は言葉を続ける。 「あなた、上条当麻のことが…」 その続きを予想し、上条は息を呑む。 そして、美琴が震える口を開いた。 「殺したくて殺したくて仕方がありません」 は?と呟き目を開けると目の前の『御坂美琴』が後ろに手を回しているのが見えた。 『御坂美琴』は今まで見たことのないほどの凶悪な笑みを浮かべ、背中に隠していた銃を手にとり上条に突きつける。 「み、みさ…か?」 目の前の出来事に体がついていかない。 その前に目の前の出来事を受け入れられない。 さっきまで楽しく話していた『御坂美琴』が上条当麻に銃を突きつけて、上条当麻が『御坂美琴』に殺されかけていることが理解できない。 なぜ、美琴が銃を持っているのだろう。 なぜ、美琴が上条に銃を突きつけているのであろう。 なぜ、上条は美琴に殺されそうになっているのだろう。 そのすべてが上条には理解できない。 完全に思考が停止した。 「アハハハハァハハハハァハハハ!!ずっと…ずっとこの時を待ってたよ、当麻ぁ」 銃を片手に美琴は笑う。 「ねぇ初めて出会ったときのこと覚えてる?」 「………………、」 「覚えてないよね。だって当麻は記憶喪失だもんねえ!!」 「え………ッ!?なんでそれを………」 上条の背筋に冷たい何かが走った。 目の前の『御坂美琴』を彼女を知るものが見たら『偽物だ』と言うだろう。 目の前の『御坂美琴』は見るものを凍らせるような笑みを浮かべる。 「お前は……お前は御坂……『御坂美琴』なのか?」 「それ以外の誰に見えるの?私は正真正銘、皆大好き美琴ちゃんよ」 肩まで伸びる髪に、勝ち気な瞳。 上条より少し背の短い身長。 常盤台中学の制服を着た目の前の少女はどこからどう見ても、上条のよく知る『御坂美琴』だった。 極めつけは右手だ。 上条の右手には超能力であろうが魔術であろうが問答無用で打ち消す『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が宿っている。 その右手で今この瞬間、『御坂美琴』に触れているのだ。 (変装じゃない?魔術でも超能力でも……ならこいつは誰なんだ!?) 「お前はいったい…誰なんだ!?」 思わず叫ぶ上条。 それに対し『御坂美琴』は、 「だからね当麻…」 悪意のある視線で上条を貫いた。 「私の名前は御坂美琴って言ってんでしょ?いい加減覚えなさいよクソバカ」 そして『御坂美琴』は一瞬のためらいもなく引き金を引いた。 誰もいない地下駐車場に一発の銃声が響き、血が辺りに撒き散らされる。
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/記憶鮮明! 「無理を言いますね」 何もかもが白い少年が答える。 「で、どうだ。できンのか?」 「今言ったじゃありませんか」 「できねェ、ってェのかッ!」 「凄まれてもですね……そうです、説明しましょうか。あの時『垣根帝督』は」 目の前にいる少年、一方通行と話している人物は第二位の超能力者垣根帝督である。 「その場にこびりついていた残留思念を拾って人形を仕立て上げたんです。明確に残っていた情報を元にしてです。それで第三位御坂美琴さんはAIM拡散力場に溶け込んでいる状況でしょ?『核』となる物もなく抽出した情報を元に型作っても未元物質でできたミサカミコトを作るだけですよ」 「だから、それで」 「受信媒体を造るだけで相互通信は無理です。それで相互交信ができるくらいならミサカミコトさんに語りかける事で十分ですよ」 「先生も、今はそれしか手が無いって、他にも方法は考えてみるけど医学的には難しいって」 そこで上条が初めて口を挟んだ。3人が会っているのは使われていない工場の跡地、元の工場の中は全ての機材が運び出されがらんどうの状態、廃棄され再利用もされずに暫く経つのか敷地のあちこちに草花が咲いている。 「くそっ」 「一方通行、言葉が汚いですよ。打ち止めの前で使ってないでしょうね?教育上悪いですから気をつけて下さい」 「オマエに言われたかねェ!」 嘗ての『垣根帝督』なら確かにそうなのだが、 「それにしてもアナタがこれほどに気になさるとは、罪滅ぼしですか?」 今の垣根帝督は素知らぬ顔で一方通行に問う。それに対し一方通行はそっぽを向いて 「違ェ、責任を放棄しようってのが気に喰わねェだけだァ」 言う。 「素直じゃありませんね」 「勝手に言ってろ」 「御坂も多分わかってくれると思うぞ?」 「かァァァみじょうくゥゥゥン、なァァァにを言ってンですかァ?なァンで最後が疑問系なァンですかァ?ふざけてっと」 「ふざけてる余裕なんか……」 上条に沈痛な様子が見え、一方通行も口を噤む。一方通行にしてみれば余計な一言だったが上条はフォローのつもりだったのだろう。 垣根との面会に期待するどこかが大きかった。その反動がでている、重苦しい空気がのしかかる。 期待させたのは一方通行、流石の一方通行も何も言えなくなる。 「まあまあ第一位の本心は第三位にも伝わりますよ」 その空気を破る垣根の声。 一方通行は垣根帝督へ向き直りギロッと睨む。 「適当な事言ってっと」 「適当な事は言ってませんよ」 「はァ?」 「直接交信する手段はありませんが、見て下さい」 そう言うと垣根帝督は指し示すように手を広げてみせた。 「見て下さいって言われも別に」 そちらに目を向けても上条には雑草に混じって花が咲いているだけに見える。何か変わったところがあるように見えない。 「気づきませんか?」 すると、顔をしかめ 「そういやァ、公園でも季節はずれの花が咲いてたなァ」 一方通行が花に目を留める。 「ええ、張り巡らした未元物質によれば学園都市中で同じ現象が起こってます。学園都市の気象データでは狂い咲きするほどの変化はありませんね」 「どーゆーこと?」 第二位の力を借りて美琴を呼び起こそうとした案はその第二位により否定されてしまった。しかし第二位は光明があると言ってくれていると感じられた。 上条は藁に縋る思いで問う。 「覚えていますか?天啓、薬味久子は人的資源(アジテートハレーション)の時、ヒーローの素質を持つ能力者へ天啓を与えました」 「あ、ああ」 「今、花が咲いている現象の原因は、そう、AIM拡散力場からの作用です。無意識下の行為でしょうが、おそらく第三位は夢を見ています」 「夢だァ?」 「はい、つまり」 「つ、つまり?」 「第三位は深層意識奥深くに沈み込んでいる状態ではありません、レム睡眠状態かと」 レム睡眠とは体は寝ていても脳は覚醒している状態を指す。問題は夢であるか自覚しているか。 「だと、外部からの情報は無意識下に取得しているのか」 例えば一方通行の反射。一方通行の能力では全てのベクトルを変換できる。それを全て反射に設定してしまったら重力の影響を受けなくなり地球を飛び出してしまう、他にも先ず目が見えない、手で物に触れない、下手すれば息もできないなど悪影響ばかりとなる。そのためフィルターにかけ一方通行は有害と無害に取捨選択している、特に意識もせず行っているだけで情報は取得しているのだ。 そして、それと同じ事で外部の情報を取得しつつも意識を向けるまでに至らない。意識を向けるまでの外部作用が足らない。 「その状態でしょ」 「じゃあ、俺ができることは?」 上条も全てを理解できた訳では無かったものの、自分が成し得る事を問う。 「……犯人を見つけることですね」 軽く首を捻ったあと、垣根が答えを出す。 「おい?」 一方通行が訝しげに問うが垣根は無視して続ける。 「第三位が気にされたのは犯人について、上条さんに特に思い当たる節が無ければそちらでしょう。犯人をミサカミコトさんと一緒に探すのも良い手ではないでしょうか、失われた記憶が探す過程で呼び起こされ、覚醒のための刺激になるのでは?その方向でまずは動いてみてはどうです?」 「それが刺激になって御坂が目覚めるんなら」 眠っている子を醒ますには声をかけたり、指でつついてみたり、揺さぶってみたり、外的刺激を与えるのも一つの方法。 但し、美琴の意識はAIM拡散力場のなか。AIM拡散力場へ如何なる刺激を与えれば目を覚ましてくれるかわからない。 垣根が言うようにミサカミコトと共に犯人を突き止める行為、記憶を呼び覚ます行為が刺激となるやもしれなかった。 「どんなことでもやってやる」 上条は拳に力を込める。 話が終わった。 垣根と上条、一方通行は別れ、そしてそれぞれが帰途につく。と言っても垣根には帰る先があるわけでもなく、その場から離れ一人で事態に備えるつもりだった。 が、 「さっきのはどういうつもりだァ?」 その垣根の前に別れたばかりの一方通行が待ち伏せていた。 「暇ですね一方通行、それとも帰りたく無いのですか?」 「ンなこたァ、オマエに関係ねェだろがァ」 「番外個体はともかく打ち止めから罵られるのはキツいですものね」 「よっぽど死にてェらしィなァ」 ギリッギリッと音が聞こえそうな表情で一方通行は指を首に巻かれたチョーカーへと伸ばす。 「冗談ですよ、それとお聞きになった事、実はお分かりでしょ?」 手を止め、しかし直ぐにでもスイッチを切り替えられる状態を維持しながら一方通行は 「ショック療法か」 聞き返す、おおよその見当はついていた。 「ええ」 「彼のピンチを放っておく第三位ではないでしょう。当然ですが万一には備えて置きますよ」 「あァ、そうだな」 一方通行は首のチョーカーから手を離す。 「出しゃばるような真似はダメですよ」 「分かってる」 これはヒーローとヒロインの物語だ。 「せいぜい脇役が目立たねェようにするさ」 過去の経緯からすると犬猿の仲と言って良い二人が並んで歩く。 上条の部屋ではインデックスが祈りを捧げていた。 祈りを捧げる対象は神ではない。 対象は御坂美琴。 彼女を呼び覚ますために祈りを捧げていた。 救うべき人がいるならば救う。信条であるとか言葉にせずともインデックスにとってそれは息をするのと同じように当たり前のこと、理由を求められても逆に「何で?」と問い返すだけだろう。 そして今回は御坂美琴を救い、上条当麻を救わなければならない。 彼の壊れ掛けの心を救う。 彼の助けをすることは甘美でありながら、今回ばかりはとげが刺さるような痛みが胸に走る。 彼を巡る女性は多い。けれども美琴以外、他の女性ならこんな胸の痛みは覚えなかったと思う。 彼女だけは特別。 そんな一言。彼はまだ自覚していない、昨日彼が何を選んだか彼自身分かってない。 彼、上条が選んだのは御坂美琴ただ一人。 昨日、上条に見せるわけにはいかない涙が寝静まったあと頬を伝わった。 そして今日は祈りを捧げる。 科学と魔術、違いはあれども原理に変わりは無い。9.30がそうだった。届くと信じ位相へと響かせる。 「早く戻ってくるんだよ、短髪。とうまのために」 「誰が短髪かっ!」 何か聞こえた気がして美琴は呟いていた。 「美琴、突然どうしたんだ?」 その美琴へ上条は暖かい眼差しで優しく声をかける。 「え、何か空耳が聞こえて、ううん、何でもないの」 微笑みかけてくる理想そのままの上条に頬が火照り、どぎまぎしつつ慌てて答える。 「頬を赤くしてミコっちゃんはホントに可愛いんだから」 「ミコっちゃん言うなっ!」 頬どころじゃなく顔全体が熱を帯びてくる。永久凍土も溶かしてしまいそうだった。 「も、もうホントにキャラ違わくない?」 「いつもの上条さんなんですが」 と、余裕の上条。 つい上条を困らしてやりたくなり、抱きついてやろうかと考えてみるがそんな事できる筈もなく…… ところが、美琴の腕には鍛えられた筋肉の感触、頬には厚いとは言えないものの堅い胸板。 しっかり上条を両手で抱きしめ、顔を上条の胸に預けてていた。 「うえぇぇぇえっえっなんでぇぇぇ☆>%¥#仝♪」 状況が分からず、最後は言葉にならない。 おかしい、何かがおかしいと思いつつも、背中へと手を回し抱き返してくる上条に溺れたくなる。 「美琴、その照れ隠しに、真っ赤な顔を見られたくないからってのは分かるんだが抱きつくのはどうかな?」 からかった風でもなく、どこまでも優しく上条は言う。優しくしてくれる上条、願望通りの上条。 「そんなつもりじゃ」 上条の右手が背を伝い美琴の頭まで来ると美琴の髪を撫でた。 更に上気してくる。沸騰寸前。 気が遠くなりかける。 美琴の意識が途切れかけた時、どこかで晴れ渡った空しか見えないのに雷が落ちた。 青天の霹靂という言葉はあるが本来、何もない青空で雷鳴がすることは無い。 上気した挙げ句、誤って雷を落としてしまったかと美琴はキョロキョロと確認するが 「どうした美琴」 何も無かったかのように上条は尋ねてくる。 綻び 「今、雷が落ちたじゃ」 聞こえなかった筈がない。 「雷?したか?」 解れる。 「おかしい……告白された記憶も無い、ここがどこかも判らない、何より……アンタは上条当麻はこんな人じゃない、まるで私が夢に見たような、こうあって欲しい人じゃない」 微笑むだけの上条が 「違う」 美琴の願望の塊が その一言に霞んでいく。 残されるのは青空と一面の花々。 「ああ、そっか私死んじゃったんだ」 どうして死んだかは朧気ながら解答を得る。 「それじゃあ、ここは死後の世界?」 ただ一人美琴は美しくも寂しき世界に立つ。 「はは、これがね。あの世っていうのがあるならあの子達に謝れるかと思ってたけど」 願望で作り出した上条がいただけ。 「だったら……何をやってんのよ、私」 澄み切った青空も地平線にまで広がる花畑も見たい物を見てるだけかもしれない。心象風景の投影。 「一人ぼっち、か」 自嘲気味に口ずさむ。と、唐突に強大な情報圧がその世界に割り込む。 眩いまでの光が空間を切り裂くように生じる。 「これが君が描いた世界か」 それが人の姿を象り美琴へ話しかけた。 「誰っ?」 人ではない、人の姿をした別の高位存在、直感が告げる。 「『ドラゴン』」 「『ドラゴン』?」 「そんな記号で呼ばれているだけだが」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/記憶鮮明!
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【種別】 人名 【初出】 十五巻 【CV】 高橋 大輔 【解説】 『メンバー』所属の空間移動系能力者。 その能力特性から一方通行(と地の文)には『死角移動(キルポイント)』と称される。 第二三学区・航空宇宙工学研究所付属 衛星管制センターへ向かう一方通行を阻止するために立ちはだかった。 演算補助装置を起動する前に攻撃することで一撃を喰らわせることに成功したり、 銃の照準をずらしておくことで銃撃を封じたりすることで善戦するも、 能力の欠陥を見破られた末に「自分に向けて銃を撃ち、ベクトル変換で照準を合わせる」 戦法を取った一方通行に反撃を受け、たっぷり超一流の悪党の美学を叩き込まれた。 時系列的に原作十五巻の直前(*1)にあたる『超電磁砲』第七十二話では、 BLAUのファンの一人として登場。 BLAUに「恐ろしい人だ・・・」と言ったり、キレた美琴にBLAUや他のファン2人もろとも粛清されるなど、意外な側面を見せた。 新約十巻でトールは『相手の死角に飛び込む能力』は学園都市では強能力(レベル3)相当と評しているため、 彼の能力は強能力(レベル3)だと推測される。
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1 不完全な静寂が延々と続く。僅かに聞こえるのは、か細い呼吸音と足音。 日の光が完全に遮断され、黒ずんだ壁に囲まれたこの部屋で一人の少年が 落ち着かない様子で、コツコツと乱れた拍子を現代的なデザインの杖で奏でながら 右往左往していた。頭頂から靴の末端まで白一色に染まっている彼は この一室では浮いて見える。 少年の名は一方通行。その整った顔からは嫌悪、焦燥の表情が絶え間なく 作り出されていた。動揺が隠せないからだろうか、寒気を感じる。 (……結果はまだ出ねェのか?) その目線の先には、少し薄汚れたベッドで眠りにつく少女があった。 少女の名は打ち止め。かつての天真爛漫で、元気を振りまく姿は 一切その様子からは想像出来ない。以前の衰弱しきった病態から抜け出せたのが せめてもの幸いだったが。 (やはり畑違いの人間じゃこの苦痛を取り除く手段はわからねェってワケか) 仮の答えを弾き出した一方通行は自分の考えを整理していく。 あのヒーロー……いや、あの『上条当麻』との再戦に破れた後、 奴が打ち止めに右手で触れた瞬間、打ち止めとエイワスの繋がりは一時 断ち切られた。少なくとも生命の危機からは辛くも逃れられたようだ。 その後二人は上条達が率いる軍用車の群から離れ、金髪碧眼の男と同行することと なった。その者はオッレルスと名乗り、打ち止めの体を検査してみようと 提案した。一瞬罠かと頭をよぎったが、例えそうだとしても、 打ち止めに害意を加えない限りは利用出来ると踏んで、一方通行はそれを承諾した。 第一、あの上条達に誘導され出会った人物だ。おそらく学園都市の傘下に属す者では無い。 そしてそのままこの建物に辿り着いた。外観からしても相当老朽化した建造物とわかる。 今、オッレルスは席を外している。おそらく別室で文献を漁っているのだろう。 (だとしても、俺のやるべき事はもう決まってる。このガキのためなら……) あの一戦から一方通行の思考はより尖っていった。今までの自分との剥離、 根源とも云うべき心の主柱の変化を自分自身でも確かに感じていた。電流が走ったかの様だった。 これまでの彼は『自分がこうあるべき』、『自分が果たさねばならない事』といった 義務感、使命感、自分勝手で自己満足的な、まるで子供が思念する目標を掲げ 動いているだけだった。あの少女が突きつけた言葉の通りに。 それだけでは結局は何も変わらない。身勝手な理想論を無理矢理描き、その実現に 走り続けるだけではこれより先に控える試練は絶対に乗り超えられない。 (だったらどォする?) ならば、『自分がなりたいもの』、『自分が本当に成し遂げたい事』と心が叫ぶ 直接な願いや直感に従えばいい。無粋な言葉で語れば、夢、などとも言おうか。 そうすればもはや心身は揺るがない。もう心がどんな残虐な所行に引き裂かれても、 体の四肢を全て捻り切られようとも、どんな痛みにも耐えられる。突き進められる。 偶然にも、この理念はあのツンツン頭の少年の行動指針と重なる一面があった。 それに気づかない一方通行だったが、その転換に確実な手応えを感じていた。 ーーそうしてその後、彼は気怠そうに、明らかに意識してふと何気なく振り向き、こう呟いた。 「で、何でオマエがここにいンだァ?」 その背後には、かつて彼の心を打ち砕いた茶髪の少女が微笑みながらちょこんと座っていた。 少女の名は番外個体。第三次製造計画によって生み出された、新たな『妹達』の一人だ。 2 「やっほう。やっとミサカの存在を受け入れてくれたね。第一位。ずっと後ろで ひたすらアピールを繰り返してた努力が実って嬉し涙が出そうだよ」 愛想を振りまく天使の様な笑顔を見せつけながら番外個体は少年に抱きつこうと迫って来る。 一方通行は溜息をつかざるを得なかった。何せ自分と打ち止めを殺しに馳せ参じたはずの 人物が、背後から吐息を吹きかけたり、体に触れて微弱な電流を流してきたりするのだ。 逆に関わりたくなくなるのが当然の反応だろう。 「あのなァ、オマエが抱えてた任務とかが頭からスッパリ抜け落ちてンならまだしも、 どうして俺の側に平然といられンだ?俺がオマエにナニやったか覚えてねェのか?」 当然の疑問をこのアバズレ少女に投げかけてみるが、その回答はまたおかしな物だった。 番外個体が、その意外と膨らみがある胸を張って答える。 「もちろん覚えてるよ。第一位がミサカのこの美顔に何度も豪打したのも、ミサカの使命も。 でもそれらの事情はこの番外個体における現在の行動には全く干渉しない」 どういうことだ?今一不透明で番外個体の本心が読み取れない。話を続けて聞くと、 「ミサカは超能力者第一位の一方通行と、ミサカネットワークの統制者である打ち止めを抹殺し その後ミサカ自身も『セレクター』によって処分されるはずだった。でも第一位の『温情』に よって偶然生き延びてしまった。破壊された『セレクター』には学園都市がミサカを監視、 制御する機関が備わっている。それが無くなった今、もはや誰もミサカを縛る事は出来ない」 『温情』という言葉に引っかかりがあった。一方通行は確かにあの瞬間だけは番外個体を救おうと した。しかしその感情と行動は、この世界への憎悪で全て吹き飛んでしまったわけだが…… 「つまり、ミサカは第一位の手によって自由になった。だからもうミサカはかつての目的を捨て、 新たに築かれた欲求に従って動く事にした」 ピクン、と一方通行の心臓が反応した。何か嫌な予感がする。 「ミサカは、あなたに興味が湧いた!」 番外個体の顔が彼の唇に触れそうになるまで近づき、そう言い放った。 「打ち止めというちっぽけな存在のために学園都市に逆らい、妹達という恨まれてもおかしくない 群衆のために奔走し続ける、論理的に考えてもおかしいあなたはもうミサカの目を釘付けにした。 だからずっと着いていく。ミサカが第一位を寸分まで理解するまで。 あ、こんな可愛いミサカを傷物にしてくれた責任も取ってもらおうかな。だからミサカの事も 大事に扱ってよ。そこで寝てるあの打ち止めの様にね!」 そう熱弁した直後にまたもや番外個体は一方通行を抱擁しようとダイブしてくる。 これは、好意からくる行動とは、違う、と思う。負の感情が芽生えやすい番外個体が ここまで自分を好くのには、どうしても違和感を感じる。自分を憎んでいたのではないのか。 ……とつい勘ぐってしまう。裏があるんじゃないか、そんな気がしてどうもこいつを 受け入れられない。うざそうにあしらってから、話題を変えた。 「そォいや俺はオマエをさんざん痛めつけたンだったな。なら何で外傷が一つも 残ってねェんだ?『肉体再生』なンざ使えるワケでもねェし、俺はそこまで 治療した覚えは無いンだが」 確かに今の番外個体は不思議な事に一方通行が負わせた傷も一切無く、健康そのものだ。 叩き折ったはずの腕の骨すら完治している。そんな状態で傷物とか言われても釈然としない。 ニヤニヤしながら、艶かしく手で全身を伝わせつつ答えてきた。 「『暗闇の五月計画』を覚えてるよね?第一位の演算パターンを元に自らの『自分だけの現実』を 最適化させる実験があったんだけど、その中には第一位のベクトル変換能力を応用して 生体電気を制御し、自分の細胞復元速度を早める能力データが残されていた。 あなたを殺す際に『書庫』にアクセスする機会があったから、それを知って流用したの。 体内の電子情報を操れるミサカなら、あなたとほぼ同じ精度で体を癒せる。 理論上なら他の妹達にも実行可能だったろうけど、大能力者であるミサカ以外は 実戦投入は無理だったかもね。そもそも絶対能力進化実験の障害になるから 知らされていなかっただけかも」 「ほォ。ちゃんと理由があったンだな。だったらこのガキも類似した事が可能なワケだ。 そいつを引用してこいつの中の異変を取り除けねェのか?」 そろそろ余興とも言える会話は打ち切るべきだろう。時間は待ってくれない。 ここで一方通行は核心に触れられるよう、また話を移行させた。番外個体も重要だが、 それより優先すべき事は山積みだ。何より打ち止めを救う可能性があるなら何でも試す必要があるからだ。 だが、番外個体は返答せずに頬をぷくーと膨らまし、そっぽを向いた。 自分より打ち止めを重く扱った事に不満があるらしい。面倒な奴だな、と思いつつ 番外個体に正誤を問おうとした瞬間、 一方通行の腹下部に重圧が掛かった。 3 この合図はここに来た、いやこの男にあった瞬間にもあった。明らかに異質な反応。 かつて一方通行が海原と接触した時に感じた物と同じだ。 オッレルス。打ち止めと一方通行(と番外個体)を迎えいれた人物だ。 胡散臭さは感じない。むしろあらゆる人生の困難を全て切り抜けてきた経験がその肌に 刻み付いているかの様だった。その威厳はそこらの一般人ではまず発揮出来ないだろう。 そんな彼が羊皮紙の束を抱えてこの部屋に飛び込んできていた。待ちわびた。 「やっとこの子を治癒する手だてを思いつき、術式を構築出来たよ。君達に説明すべきだろうから 包み隠さず話そうと思うが、いいかな?」 術式などとあまり耳に入った記憶の無い言葉を聴いた気がしたが、もはやどうでもよい。 このロシアまで渡って来た目的がやっと成就するのだ。一瞬の歓喜と焦りを感じた。 一方通行はその餌に食らいつく。 「ああ、よろしく頼む。さっさとこのガキを楽にしてやりてェからな」 「まぁ待て。その前に俺は君達の名前も抱えてる事情も完璧には把握出来てない。 順序が逆になったが、そこら辺の背景を大雑把に教えてくれ」 確かに出会ったすぐからオッレルスは検査と思案に入ってしまったせいで説明不足に なってしまった。この男の、人を救うのを優先する気質が先行したからだろうか。 とにかく解説を早く済ませて打ち止めを直して欲しかったが、 「はい!ミサカとこの人、一方通行は夫婦でこの子を助けたくてここまで来たんです」 (…………は?) 横槍が入った。いつの間にか番外個体が一方通行の片腕を抱きしめつつ懇願していた。 「学園都市の医療技術でも、ミサカとこの人の間に生まれたこの子の命を持たせられないのが わかって、どうしていいかわからなくて全国を経由してこの辺境まで行き着いたんです。 お願いです!ミサカ達はどうなってもいいから、何でもしますからこの子を苦痛から 解放してやって下さい!」 涙ぐむ仕草まで仕込んである。傍目にみれば本当に番外個体や一方通行と、打ち止めが 親子だと誤解してしまいそうな程の迫真の演技だった。 (……こ、こいつ人が黙ってりゃ嘘をペチャクチャ吐きやがって……!?) ある事無い事吹き込む番外個体のデマカセを正そうと、声を荒げようとする一方通行だったが そこで異変に気づく。 声が出ないのだ。 妙だ。まるで人為的に喉が働かなくなった感じがする。何かがおかしい。思わず番外個体の 方を向くと、オッレルスに見えないように、小悪魔的な含みを持つ笑顔を一方通行に見せつけていた。 そこで原因がわかった。こいつのせいだ。体内に残留した『シート』で一方通行の首元に 装着されている電極を強制的に誤作動させているのだ。 (な……言語機能を俺から奪いやがったのか!?器用なマネしやがって!) といっても、常識的に観察すればこんな虚言などすぐにバレる。普通は信じるワケが無い。 常人なら「いや、それはありえない」と即座に突っ込む程度のウソだ。 と、オッレルスの反応に期待する一方通行だったが、 「そうか!それは難儀だったね。大丈夫だ。君たち親子の平穏が再び訪れるよう、俺も全力を尽くすよ!」 本気で信じちゃったよこの人。そういう変人だったのか。 こんな奴に打ち止めを預けた俺が間違ってたのか。いや、馬鹿だからこそ上条はこいつを推薦したのか? 歪曲した首肯があまりにも馴染みすぎている。もう訂正するのも諦め、事態が好転するのを待つ事にした。 自分が滑稽な扱いを受けてそれで済むなら大歓迎だ。今日までもそういった色眼鏡で見られてきた。 そうしている内にオッレルスが口火を切った。 「よし。必要な情報は揃ったし、本題に戻るとしよう。……申し訳ないが、 奥さんは席を外してくれると有難い。君が娘さんを心配しているのは重々理解してる。 しかし、先に彼だけに述べておくべき事が少しだけあるんだ。短時間で済む。いいかな?」 想定外の滑り出しだった。同時に危機感が一方通行の脳裏に行き渡った。これは艱難の暗喩だ。 打ち止めの治療に何らかのデメリットがあると、暗に示している。考え過ぎであってほしい。 そうとも知らず、口車に乗せられた番外個体は意外にもすんなりと申し出を受け入れ、 「そうですか!確かに懸念が残りますけど、どうしてもと言うなら指示に従うまでです。 この子を頼みます……」 と着飾った決まり文句を漏らしながら、ドアを開けて廊下に出た。同時に妨害電波も 次第に減退していき、一方通行は平常に戻った。ここからが本番だ。固唾を飲んで、宣告を急かした。 「アイツが漏らした通り、このガキは科学の枠に留まる技術じゃどォにもならねェ。 この病状自体が学園都市の差し金で惹起したからだがな。それで俺達は奴らと反目した。 そこで『全く別の法則』とやらが必要になると聞いた。それを求めてここまで来たワケだ」 「先刻までの戯言は彼女に真実を知らせない為の詭弁だよ。混乱を招くからな。 君の抱える問題も学園都市の策謀もこの子に降り懸ってる異常の根源も承知している。 あのアレイスターの聖守護天使がこの子を踏み台にして顕現したんだろう。 正確にはミサカネットワークによってAIM拡散力場を前導させるのを 強引に打ち止めを『始動キー』として、持続させている」 一方通行は目と耳を疑った。この男は今、打ち止めの病状の原因を明かすどころか、 学園都市が抱える闇そのものの正鵠を射った。門外漢かと思いきや、一方通行以上に現状を理解している。 どこからそれほどにまで正確な情報を知り得たのか、疑問は残るが、 ならば話は早い。先程の発言に引っかかりと底知れぬ不安を感じるが、今は前に進むしかない。 「そこまで把握してンのなら、さっき口走った『治癒』も的確なンだよなァ。 だったら、ここまで焦らす必要は毛頭無ェはずだ。……何を隠してやがる?」 一番の不安材料にメスを入れた。打ち止めの『治癒』に弊害があるならば、全て排除するまでだ。 だが、その弊害についてはこの男は黙ったままだ。まさか、そこまで事態は深刻なのか? オッレルスは重い口を開いた。 「『治癒』の方法は二つある。一つは最終信号をミサカネットワークから断絶させる事だ」 何? 「聖守護天使は最終信号を『始動キー』としているが、本来なら顕現した時点でミサカネットワークを 間借りするだけでAIM拡散力場を永続的に連結し続ける事が可能だ。 しかし、どうやらアレイスターは念には念を入れて『始動キー』を常に待機状態に設定し、 万一聖守護天使が崩壊したとしても、すぐまた現世に回帰できる体制を取っているようだ。 故に最終信号に、極難解で不安定な演算を常に無意識の内に反芻させるような仕組みを植え込んだ」 つまり、エイワスとの戦闘時に奴の『核』を弾いたにも拘らず平然と復活したのは、 打ち止めに『始動キー』を埋め込まれた証拠だという事か。 それが理由。最終信号としての役割を果たすため、望んだ訳でもない不条理な重荷を背負わせ続ける。 彼女は何も悪い事をしていないのに。一人の人間なのに?どうして道具としてしか彼女を扱わない? 「……じゃァ、その仕組みを解けばいいんだろォ?どうしてこのガキをミサカネットワークから 切り離すなんて解決法が取られるんだ?」 打ち止めがミサカネットワークから外される。即ち、ミサカという大脳からの脱却とは 妹達との意識疎通がされなくなり、情報や記憶の共有が途切れる事を指す。 いや、ミサカネットワークの司令塔である彼女がいなくなれば、学園都市は同機能を持つ新たな個体を 刷新するはずだ。それか、それこそが伴う痛み、なのか? 「『始動キー』は、最終信号個人の脳だけではとても抱えきれないほどのヘッダを持つ。 つまりこの子の頭で処理出来ない部分は他の妹達に分割され、代理演算をさせるように 最終信号が上位命令文を妹達に送りつけているんだ。即ち、最終信号が上位命令文を出せない状況に なれば『始動キー』は不完全な計算式の固まりと化し、最終信号に埋め込まれた『始動キー』そのもの も自然と意味をなさなくなる。こうなれば後は学習装置で治療出来るレベルまで落ちる」 ここまで判明しているなら、問題は解決したと同義ではないか。一方通行はここでようやく 心のしがらみが和らぐのを自覚した。 しかし、現実はまだ一方通行と打ち止めを許さない。 「ミサカネットワークと最終信号を切り離すにあたって、俺の術式を施すわけだが、 ここで一つの欠点があるんだよ。最終信号の超能力を人為的に消し去る必要があるんだ」 ……つまり、科学以外の手で能力を消滅させる。 電流を操れなくなれば打ち止めはミサカネットワークと繋がらずに済む。 『全く別の法則』に乗っ取って。 それは、その結果が齎すデメリットは、 「……彼女の言語機能と計算能力を削ぎ落とす。今の君の様に、だ」 4 死角からの残酷な事実。覚悟を背負ってここまで来た。打ち止めのためなら、 自分の信念も生き様もプライドも、自己の破壊に当て嵌まる犠牲なら、それらを受け入れる覚悟を。 だが、実際の代償は覚悟だけでは足りなかった。 つまりは、打ち止めを救うなら打ち止めそのものを犠牲にしろと言っているのだ。 一方通行は嘲った。打ち止めを敵に回してでも戦う決意があろうとも、 打ち止めの属する世界をぶち殺してまで、打ち止めを守り抜く手腕が無かった自分を。 言語機能、計算能力への後遺症。その重みは苦渋を洩らすほどわかる。 一方通行本人も、あのカエル顔の医者に与えられたチョーカー型電極によって ミサカネットワークの補助を受けなければ廃人に限りなく近い存在になってしまう。 打ち止めがそうなったら?もう光は途絶える。彼女をミサカネットワークから切り離す為の処方だ。 一方通行と同じ埋め合わせは不可能。待つのは物事を楽しみに笑う彼女、 自分にだけ向けてくれる、無邪気で、バカらしくて、こっちも笑い飛ばしたくなる太陽の様な笑顔、 それらが抉りとられた灰色の世界だ。 絶望が境界線を逸脱して光の世界にまで浸食してくる。その光の中心にいるはずの打ち止めに向かって。 だが、頭の中は驚愕するほど冷静だった一方通行はどうしても拭えない考えに至っていた。 (イイじゃねェか。簡単だ。この『治癒』が終われば、少なくとも学園都市のクソったれどもは もう打ち止めを奪ったり、始末しようとはしねェはずだ。打ち止め本来の役割が白紙になるからな。 言語機能?計算能力の低下?それだけの犠牲で済むなら大満足のハッピーエンドで終幕だ) そう、自分が頷いてしまえば。もう終わるのだ。戦いも、打ち止めの災難も。 自分の脳裏に焼き切れるまで刻み付けた、打ち止めのいる光の世界を守るはずの、自分の覚悟さえも。 「どうするんだい?この『治癒』なら10分で準備できる。やるなら今しかないだろう。 学園都市にこの末路を漏洩させないためなら、ここで打ち止めの『自分だけの現実』を無くすんだ」 オッレルスが何かほざいている。学園都市?そんなものもあったっけ? 放心状態だった。だが理性はこれに従えと煩く後押ししてくる。やれ、やってしまえ。 でも、でも、それでいいのか?一方通行は自分の脳、心、魂に真義を問うた。 自分の本心。未来の夢。それは、 「ォ断りだ」 はっきりと言い放った。誰かに命令されたワケでもない。熟孝して導いた論理的に正しい結論でもない。 「……このガキの生涯まではオマエも片耳でしか聴いた事ねェだろォ?こいつはな、 本来なら本当に小せェ存在のはずだったんだ。普通に大きくなって、ダチ見つけて遊んで、 黄泉川や芳川に恋愛相談なんかして、騒がしいモンには野次馬気分で覗きにいって、 それで最後に自分から笑う。そんなどこにでもいるただのクソったれの子供でいられたはずなんだ」 一方通行は信じていた。あらゆる闇や暗躍するクソ共を駆逐しきれば、打ち止めもただの少女として 生きられる。そんな純朴な幻想を。 それが本心だった。そうしたかった。ウソは無い。本当にそうしてやると無意識に願い続けていた。 だから、引き下がれない。善人だろうが悪党だろうが関係ない。 一方通行という個人のみが持つ、譲れない思いだった。 「そいつを乱すようじゃァ、納得出来ねェンだよ。言語機能?計算能力?ンなモン捨てなくても 門は開いてゆく筈だ。もし無かったとしても、俺が学園都市最強の力で風穴開けてやる。 ……だからオマエの申し出は受けられねェ。すまなかったな」 一方通行は頭を下げた。オッレルスも打ち止めの心配の末に この『治癒』を提案したのだ。無下にはできない。本来なら人に会釈する一方通行などありえないはず。 それを実感して、オッレルスは深い笑みを浮かべて頭を上げてくれと言い、 「そう決断すると予想してたよ。そうだ。どうせ未来を切り開くのなら より輝かしい方が良いに決まってる」 未来か。 「ンじゃ、俺らはここにはもう用は無ェな。夜が更けたら出てくが、それでイイよなァ? こっちもか細いヒントを幾つか持ってるしな。そいつを手がかりに動くさ。世話になった」 「ふむ……君らしくない。少し前の要点を忘れてないか?」 少し前?第一『治癒』の壮絶さに戦慄したせいか、些細な情報を抜け落としたかもしれない。 が、ここで前の記憶を取り戻した。打ち止めを救う手段は『治癒』だけではない。それは、 「第二の手段だ。禁書目録を呪縛から解放し、彼女から完璧な治療法を聞き出すんだ」
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「一応聞いておきたいンだが」 「なんだい?」 少年の病室へと向かう廊下で。 一方通行は隣を歩く、難しい顔をしたままのカエル顔の医者に問いかける。 「学習装置を三十分内で、回数を分けてあの野郎の頭に入力するってのはダメなのか?」 「ダメだね」 即答だった。 「それができれば一〇〇三二号さんは、入力時間を算出する必要は無くなるよ」 「何故だ?」 「今回、強制入力するのが『知識』ではなく『経験』だからだ」 「あン?」 一方通行がいぶかしげな声を漏らすが、カエル顔の医者は前を向いたまま続ける。 「人はどうやって形成されていくか、知っているかい?」 「なンだそりゃ? ンなもン、歳を経ていく過程で得る知識と、取り巻く生活環境という経験で培われるものだろうが」 「その通りだ。では、その『経験則』が二つも三つもあったらどうなるかな?」 「はァ? なンだそりゃ?」 「今の上条くんは、前の上条くんではない、それは理解できるよね?」 「まアな。記憶がねえンだから、あア、そうか、そういうことか。記憶を書き込むって表現は間違いじゃねエが、言ってみりゃ、アイツは前のアイツの記憶を、一冊の本にして頭に植え付けるってようなものか」 カツン、カツン、と廊下に三人の足音だけが響く。 軽くはない。この一歩一歩が上条当麻の病室へと近づいていくのだ。一方通行はともかく、御坂妹の足取りは次第に重くなっていく。 「そうだ。そこで聞くが、仮に君の経験談を二つの物語に分けて、別の誰かに別々に読ませたとしたら、その人物は君をどう判断すると思う?」 「俺の経験談?」 「難しい話じゃない。八月二十一日以前と八月二十一日以後で構わないだろう」 ――!! 一方通行は立ち止まった。カエル顔の後頭部を殺気漲る目で睨みつける。 「……どォいう意味だ?」 「何、その二冊の経験談を読んだ、その別の誰かは君をどう思うか、というだけだ」 カエル顔の医者も立ち止まる。しかし、一方通行とは違い、その表情にはまだ余裕がある。 それはこの医者が一方通行という少年を理解しているから、とでも言おうか。 一方通行にこの話をしても、一方通行は決してカエル顔の医者に牙を向くことはない、と。 「おそらく、その別の誰かは、こう思うんじゃないかな? 『一方通行という人物は二人いる』と」 「くっ……!」 カエル顔の医者の言うとおり、一方通のはその日を境に、まるで違う二人がいるようなものだ。 本人であれば、どちらも『自分である』と断言できる。それは『一方通行という一つ経験の流れの中で起こった出来事』だからこそ、『過去があって未来がある』という風に解釈できるからだ。 しかし、まったく一方通行のことを知らない第三者が、この二つの経験談を別々に見せられたら、『現在』の一方通行が、どっちの一方通行か判断できない。 ゆえに、二つの物語があるということは、『一方通行は二人いる』という誤った答えに辿り着いてしまう。 「さて、そうなると、『記憶を書き込まれる』上条くんの場合だが、現在の『彼』は、皆が知る『上条当麻』ではない。『上条当麻』はあくまで、『上条当麻』という一つの経験の流れの中で培われるものだ。そして、失われた『上条当麻』の物語を、複数回に分けられて見せられるだけならまだしも、脳に書き込まれたら『彼』はどう判断するだろうか」 「なるほどな……『複数の経験談(物語)』が存在してしまい、本当の自分が分からなくなる、ってことか……」 「解離性同一性障害、多重人格の自覚版を引き起こすだろうね。どれが本当の自分なのか分からないわけだから、その後に待っているのは自我の崩壊だよ。別の誰かが君の物語を二つに分けて読むだけで、君が二人居ると思ってしまうのだから、学習装置使用限度三十分だとしても、仮に今回の場合は入力時間が二時間だから、少なくとも四つの『上条当麻』の記憶が書き込まれることになる」 「それを一つにできねエのか? たとえば誰かに時系列順に説明してもらうとかして」 「誰が説明するんだい? 人によって上条くんという人物の捉え方は違うものだ。そこには正解なんて存在しないし、人間は、基本的に自分以上に他人を信用することはあり得ない。結果的に、上条くんは『書き込まれた記憶』から自分を判断することになるわけだから、四つ経験談(物語)があれば、四つの人格と誤認してしまう。それがどんなに似たような経験談だろうと、それらを一括りにはできない」 「なるほどな。つーことは、一回でやらなきゃ、『一つの経験の流れ』ってことにならねエから、本当の意味での『アイツ』にはならねエ、ってことか」 「そういうことだ」 二人は再び歩き出す。 随分、先に行ったのか。 御坂妹はすでに、二人の目の前にはいなかった。 こんこん、と部屋を二回ノックする御坂妹。 内に秘めたる思いと供に。 どうぞ、と声がした。 その声を聞いて、そっと部屋のドアを開ける。 視線の先には、こちらを向いている上条当麻が居る。 「どうした? もうすぐ就寝の時間になるから、あまり長くは相手できないけど」 言って、少年はにかっと笑う。その笑顔は『知らない人に対する愛想笑い』ではない。『知り合いに見せる安堵した笑顔』だ。 御坂妹は上条当麻に意識が戻って以来、何度も何度も足しげく、この病室に通っていた。 「あなたに少し残念なお知らせがあります、と、ミサカは心苦しい心境を吐露します」 「……残念なお知らせ?」 「はい、ミサカが先ほど言いました記憶回復の方法ですが、ミサカが考えていたやり方は不可能になりました、と、ミサカはあなたの目を見ることができないので伏せ目になります」 「は?」 実のところ、上条当麻の意識が戻ったのは救出されてすぐだった。 日数に直せば、三日ぐらい。 しかし、御坂妹を始めとしたミサカネットワークはその情報を、あえて公開しなかった。 少年を独占したかったからではない。 少年が記憶喪失だったからではない。 御坂美琴の状態が最悪だったがために公開できなかったのだ。 ミサカネットワークにとっては、上条当麻と同じくらい御坂美琴も大切な存在だ。 上条当麻の無事を知って喜ぶ者がいるだろう。しかし、反対に御坂美琴の危険を知って嘆き悲しむ者もいる。 ミサカネットワークとしては、双方供に無事であることを知らせたかったのだ。 だからこそ、美琴が、峠を越すまで待っていた。 そのことに、カエル顔の医者も同意してくれた。 少年には、周囲に告げるのは、状態がもっと安定してからと嘘を吐いて同意してもらった。 だから、カエル顔の医者はインデックスに一つ『嘘』を吐いた。 『昨日までのことを思い出すことはない』と言ったのは、前回と同じ印象を与えて、上条当麻が一ヶ月以上前から目が覚めていたことを悟らせないようにするための方便だったのだ。 と言っても、記憶喪失の少年を放置するわけもなく、孤独で透明な少年の心を癒すために御坂妹は、それこそ毎日、時間の許す限り通っていた。 「ですが、あなたの脳に、あなたの記憶を書き込んでくれる能力者が来てくれましたので、ミサカが用意する予定だった機材を使用することなく、ミサカが先に提示した方法での記憶回復は可能です、と、ミサカは、まずは事実のみをあなたにお伝えします。 「そ、そうか? なら、別に問題はないってことだよな?」 「方法自体は問題ありません、と、ミサカは率直にあなたにお伝えします。ここから先は、あなたの脳に記憶を書き込んでくれる能力者が説明いたします、と、ミサカは、もうすぐここに来る能力者に託します」 「能力者?」 結果、透明な少年にとって、御坂妹は、初めてできた友達、心を許せる存在。不安を取り除いてくれる姉か母親のような人になっていたのだ。 今の会話にしても、上条は少し疑問を抱いたが、御坂妹の言うことであれば、たいてい信用しているので、とりあえず、御坂妹が呼んだという能力者を待つことができるくらいに。 唯一、御坂妹が語らなかったのは御坂美琴のことだけだった。 これも、上条当麻を独占したいからではない。 もう一度言うが、御坂美琴が峠を越したのは、つい最近。 もし、上条当麻が御坂美琴の危険な状態を知ったなら。 もし、それが、上条当麻を助けたためだと、知ったなら。 記憶を失くしても上条当麻は上条当麻のままだったのだ。 鈍感で直情的で、自分のことよりも他人の心配ばかりする大馬鹿者のままだったのだ。 そんな彼が美琴をことを知ると心を痛めるなんてものじゃない。絶対に絶望する。心に甚大な損傷を及ぼす。未来永劫、その罪を背負ってしまう。 だから、御坂妹は美琴のことを伝えなかった。 みんなが笑って、みんなが望む、そんな最高な世界。 そこには上条当麻だって含まれる。 知らないなら知らないままの方が幸せだってこともある。 だから、御坂妹は美琴のことを伝えなかったのだ。 「本当に君がやるのかい?」 「さアな、そりゃ、ヒーロー次第だろうよ」 カエル顔の医者の溜息に、一方通行は、瞳を伏せた不敵な笑みを浮かべて答えていた。 「確かに君ならば、あの少年の脳に記憶を入力できるだろう。脳を読み取る分にはあの少年の右手は影響しない。しかし、学習装置は、能力としては低いとは言えないにしろ、かと言って常盤台中学に入学できるがどうか微妙な高さでしかないが、それでも君に勝るとも劣らない優秀な『頭脳』を持つ少女が開発したものだ。それゆえ、君であっても、学習装置と同じで、入力時間に二時間は必要になる」 「俺の電極型チョーカーのことか? 今のこいつは能力使用モード、三十分だ」 二人が会話しているのは、少年の部屋の外、ドアの影になっている場所だ。 小声なだけに上条には聞こえない。 「残り一時間半はどうする? 強制入力は途中で止めることはできない。パソコンにソフトをインストールしている最中に中断するのとは訳が違う。あれはインストール自体を無かったことにできるが、脳への強制入力はやり切らないと、脳に重大な障害を及ぼす。最悪、脳死状態にさえなる」 「だから言ってンだろ? ヒーロー次第だっつーの。それとも何か? テメエが、この俺に協力してくれるってか?」 「……入院患者はあの少年だけではない。少しでも停止できない機器も多数ある」 「だろうが。今のテメエはあいつらに協力することしかできねエよ」 言って、杖を持っていない方の手、左手をヒラヒラさせて一方通行も中に入っていく。 電灯の光とは言え、明るい部屋の中へと。 「……僕が心配しているのは君のことだったんだけどね。君もあの少年同様、自分のことはどうでもいいのかい?」 カエル顔の医者が暗闇で呟いた言葉は誰にも聞こえない。 「一方通行!?」 上条当麻は思わず声を上げた。 記憶を書き込む、って話だったから、てっきり精神操作系の能力者でも呼んだのかと踏んでいたので、まさか、こんな大物が来るとは思わなかったのだ。 まあ、御坂妹は『能力者』としか言わなかったから、精神操作系の能力者が来るとは限らないのも間違いではないのだが。 そして、そんな上条の声に疑問を持ったのは、一方通行本人と御坂妹の二人。 上条当麻は記憶喪失だ。 一方通行と面識があった思い出を失くしているはずの上条がどうして一方通行を知っているのだろうか。 「オイ、テメエ、俺のことを覚えてンのか?」 珍しく、目を丸くして問う一方通行。 その横では、御坂妹も驚きで目を見開いている。 「お、覚えているんじゃなくて、あんたは俺みたいな無能力者でも知っている、全てのベクトルを操る学園都市の第一位、最強のレベル5だろうが! 学園都市で生活している奴なら知らない奴の方がいないんじゃないか!?」 ただ不幸中の幸いと言おうか、上条当麻は記憶喪失なのだが、それは前回と同じで、ダメージを受けたのはエピソード記憶であって、意味記憶や手続き記憶までには及んでいなかった。それは、上条が言葉自体は知っていたり、起きたり歩いたりできることでも証明されている。 「アア、そうか、そういうことか。イイねイイね最っ高だねエ、オマエ! これは是非ともオマエの記憶を戻してやりたくなったぜ!」 あの一方通行が腹を抱えて笑っている。 (何が面白いのでしょう、とミサカは疑問に思います) 御坂妹はそれが不思議でならなかった。 「あの……いったい何があなた様のツボに嵌ったのでしょうか……?」 上条当麻は恐る恐る、引きつった愛想笑いを浮かべて問いかける。 「クックックックック……俺が? 最強、さいきょう、サイキョーってか? そりゃ確かにそォだったな、俺はこの街で一番強い能力者だった、そりゃつまり、世界で最高の能力者って事だったろォけどなァ……」 ひとしきり笑った後、一方通行は、なんとも本当に面白そうな、それでいて凶悪な笑顔を浮かべて言った。 上条当麻の目をまっすぐ見て。 「そんな俺にテメエは二勝無敗なンだよ。つーことは、テメエは超能力者(レベル5)以上の絶対能力者(レベル6)ってことになンのかなァ?」 (お、俺が学園都市最強(アクセラレータ)に二勝した? 嘘だろ? どうやって?) もちろん、上条当麻にはそんな記憶はない。医者に、自分の右手には『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という、異能の力であれば神の奇跡(システム)さえ打ち消せる能力が宿っていることは教えられたが、それだけで、どうやって勝てたのか、当然、予想もつかない。何と言っても右手以外に触れられた終わりなのだ。しかも、一方通行(アクセラレータ)にはぶち切れると全ての能力を凌駕し、全てを破壊し尽くす黒翼もあるのに。 と、そこまで考えて、上条はふと気づく。 「あれ? 俺はどうして、ここまで詳細に一方通行の能力について知っているんだ?」 頭上には?マークを点滅させていた。 「それは、あなたが失った記憶はエピソード記憶だからです、とミサカは指摘します」 上条は即座に御坂妹と一方通行を見た。 「つまりだ、テメエの『思い出』には残ってねエが、体は覚えてるってことだ。これで分っかンねエか? 俺がオマエの記憶を戻してやりたくなったって理由がよ」 「ええっと……つまりは、私めの記憶を戻さないと、お礼参りをした気にはならないと……」 「だろうがァ」 「はははははは……何か記憶が戻らなくてもいいかなぁ、とか思っちゃいましたけど、ダメですか?」 渇いた愛想笑いを浮かべる上条に、しかし、御坂妹が毅然と言った。 「ならば取り止めましょうか? とミサカはあなたの目をまっすぐ見て推奨します」 その言葉には侮蔑はない。嘲笑もない。 本当に真摯な言葉だった。 感情に乏しいはずの御坂妹が明らかに、まるで懇願するような口調で言ったのだ。 「ここに、あなたに関する記憶があります、と、ミサカはデータスティックをお見せします。もう一つ、この書類の束をお見せします、とミサカは鞄の中から取り出します」 データスティックはあまりに小さいもの、大きさにして上条の小指ぐらいのものでしかなかった。 しかし、そこに詰まっているデータは、目の前の、部屋に設置された土産物や花瓶を置くための小さなテーブル、普段は御坂妹の腰くらいまでしかないものに、御坂妹の身長くらい積まれている書類の高さである。 そしてこれだけではない。 「これは書面になっていますが、Eメールによって海外や学園都市の外から届いた分もあります。それらも印刷してあなたにお渡しします、と、ミサカは提案します」 上条は黙ってしまった。 確かに一方通行からの仕返しが怖くない、と言ったら嘘になる。 だが、それ以上に。 自分のために、どれだけの人が『上条当麻の記憶』を教えてくれるのか。 上条当麻という人間が、どれだけの人に愛されていたのか。 それを踏みにじることなんてことは、『この上条当麻』ならずとも許されるものだろうか。 この上条当麻も上条当麻なのだ。 自分のことよりも他人の心配ばかりする学園都市最強のお人好しで大馬鹿者なのだ。 「ミサカが毎日、毎晩、あなたにあなたの記憶を、全ての書面を読んで聞かせます、とミサカは真剣に告げます」 そしてもう一つ。 どうして御坂妹が弱気な自分を糾弾しなかったのかも分かってしまった。 一ヵ月半の付き合いで得た御坂妹の性格を思い出して分かってしまった。 おそらく、今から行う記憶回復のやり方は相当な危険を伴うものなのだ。 それも、自分自身の命に関わるような、それくらい危険を伴うものなのだ。 だから、御坂妹は止めようとしている。 一方通行による危険な記憶回復ではなく、御坂妹が読んで聞かせる安全な記録暗記へと、方向をシフトさせようとしているのだ。 上条当麻は考える。 数日前から、ここに入り浸っていた銀髪碧眼のシスター少女のことを。 初めて出会ったあの日、号泣しながら『上条当麻』のことを教えてくれた彼女。 どれだけ辛かっただろう。どれだけ苦しかっただろう。 それでも、彼女は包み隠さず話してくれた。 それでも何も思い出せない自分に罪悪感すら感じていた。 今日、あのシスターと約束した。 明日になれば、元の記憶を持った上条当麻と再会させると約束した。 「……約束?」 上条は小さく呟く。 『約束』という言葉が引っかかった。 夕方、シスターが帰り際に言った際にも感じたのだが、なぜか『約束』という言葉が気になった。 何か、とてつもなく大切な何か。 そんな『約束』を『誰か』と交わしていたのではないか、という思考が過ぎった。 もちろん、今の上条にはそれが何のかは分からない。 今の上条には知る由もないが、『インデックスという少女の涙を見たくない』と思ってしまった七月二十九日の上条当麻のように。 心のどこかで引っかかっているのだ。 ならば、と思う。 「俺は、記憶を取り戻す」 きっぱりと何の迷いもない表情で敢然と口にする。 「そりゃ、どういう意味だ? こっちのクローンに昔話を毎晩読ンでもらうみてエにって意味か? それとも今すぐっつーことか?」 「後者に決まってんだろ」 即答だった。声には何の迷いも感じられなかった。 「あァ? 本気かオイ。ついさっき、俺の仕返しが怖いって、言ってたンじゃねエのか?」 一方通行がどこか揶揄っぽく罵って、しかし、上条当麻は怯まない。 「ああ、確かに怖いさ。けどな、それ以上に、俺のために、ここまでしてくれる一〇〇三二号や、数日前から俺のところに来ているシスター、それに、こんなにも俺の記憶を必要としている人がいるんだ。それを無碍にできるわけねえだろうが」 やはり、この男も上条当麻なのだ。 こういう『誰かのため』になると誰よりも強く太い芯を持つ上条当麻なのだ。 「ほォ……イイ度胸だ」 一方通行が目を細める。 「言っとくがなァ、これからやンのは一回こっきりしかチャンスがねエことなんだぜ。二回目はねエ。なんせ、失敗するとテメエがオダブツしちまうからなンだが、そこンとこ、楽しく理解してくれるかァ?」 一方通行の凶悪な笑みが深くなる。 上条には、どうして、一方通行がここまで危機感を煽るように言ってくるのかが理解できなかった。 と言うよりも、それはどうでも良かった。 「それでもだ。どっちみち、俺が記憶を取り戻さないことには、もう誰にも会えねえ。会う資格なんざねえ。だったら、記憶が戻らないなら、そのまま誰にも知られずにいなくなっても構わないんじゃないか?」 上条は一方通行に鋭い眼光をぶつけて言った。 そこには強い意志しか感じられなかった。 御坂妹は知っていた。 一方通行が、相手を必要以上に怖がらせる理由を知っていた。 それは、一方通行の優しさなのだ。サインなのだ。 かつて、自分たちにも向けられていたサイン。 『これ以上、実験に協力するな』という意味が込められたサイン。 『もう戦いたくない、と言えよ』という意味が込められたサイン。 自分たちはそれに気づけなかった。 それが学園都市最強(アクセラレータ)を学園都市の闇の奥深くまで突き堕としてしまった。 今でも、それだけはミサカネットワークでも深い傷跡、後悔として残っている。 もっとも、だからと言って妹達を一万人以上も殺した一方通行の罪が許されるわけでもないのだが。 「カッカッカッカッカッ、なら今すぐやってやンぜ! オイ、コイツに鎮静剤を投与しろ!」 ひとしきり大笑いしてから一方通行が御坂妹に怒鳴るように促す。 しばし沈黙。 それは永遠のような数秒間。 「……いいのですか? と、ミサカは確認します」 「ああ」 「本当によろしいのですか? と、ミサカは再度確認します」 「やってくれ」 「もしかしたら、とは考えないのですか? と、ミサカは最終確認を取ります」 御坂妹の瞳から涙がこぼれてしまう。 もう二度と、会えなくなるかもしれないのに。 今生の別れになってしまうかもしれないのに。 だからこそ断ってほしい。 思い止まってほしいのだ。 上条当麻が、上条当麻自身の命を大切にしてほしいのだ。 しかし、 「それでも、だ」 上条の答えは変わらない。 「なぁに、明日になればまた会えるさ。しかも別に今の俺もいなくなるわけじゃないんだろ? そんなに深刻になるんじゃねえよ。なんたって学園都市最強のレベル5だぜ。それも俺に仕返ししたいって奴なんだぜ。失敗するわけねえじゃねえか」 言って、上条はにかっと笑う。 左袖をまくって、御坂妹の左肘辺りを軽く握る。 「了解しました、と、ミサカも決断します」 呟き、少女は少年の左腕上腕に注射器の針を注入した。 これで後戻りはできない。 正確に言えば、このまま放置する、という手もあるが、そんなことはできない。 上条当麻の気持ちを踏みにじるなんてことはできない。 上条当麻は眠りに就く。 目覚めのときは明日の朝か、それとも、まったく別の日の朝か。 病室に静寂が訪れる。 嵐の前のひと時の静寂。 一方通行と御坂妹は待っている。 何の会話もなくただただ無言で。 一方通行は、上条当麻の記憶というメモリを小型のパッドに付けてリロードさせて、上条の『記憶』を暗記し、幾度となく確認作業を行いながら。 御坂妹は、上条当麻の寝顔をずっと眺めながら。 この場に集合をかけた者たちを待っている。 三十分の時を経て、病室のドアが開く。 そこに居たのは三つの影。 「これで役者は揃ったってわけか。テメエら覚悟はイイか?」 振り返りもせず、真意を問う一方通行。 「はい、と、ミサカ一〇〇三九号は即答します」 「了解、と、ミサカ一三五七七号は首肯します」 「勿論、と、ミサカ一九〇九〇号は宣言します」 カエル顔の医者は、最大限の協力を了解し、彼女たちの行動を容認した。 今、このときだけのために。 この病院にいる妹達に、一方通行の電極型チョーカーに接続できるバッテリー充電用コードを持たせて。 「コイツを寝かしつけたのは、正解だよなア。え? オイ」 「……」 相手は何も答えない。 「まア、コイツは俺たちがやろうとしてることを知ったら、絶対に止めちまうからなア」 一方通行はなんとも凶悪な笑みを浮かべている。 話しかけているのは、隣にいるかつての『敵』。 それも初めて敗北の辛辣を舐めさせられた相手。 直接的な原因は全ての異能の力を無効化する少年だったかもしれないが、その決定打を導いたのは、間違いなく目の前の少女だ。 少女がミサカネットワークを利用して、学園都市中の風を操ることがなかったら、一方通行は負けていなかったことだろう。 もっとも、今の一方通行にとってはどうでもいいことだ。 あの操車場の一件が無ければ、今の自分は無かったはずだ。 あの操車場の一件で自分が敗北していなければ、もっと無残で惨めな自分しかなかったはずだ。 今、一方通行は自分の生き様を誇りに思うことができる。 まだまだかもしれないが、あのときよりは数百倍もマシになっている。 「さアて、始めっとすっかァ?」 振り向く先は、自分を変えた少年。 学園都市最強の一方通行を二度も破った本物の男。 そっと、男の額に手を当てる。 少年が起き上がることは無い。何事も無ければ明日の朝まで決して目が覚めることはない。 すべては今晩の内に。 それもチャンスはたった一度だ。 「先に言っておくが」 振り向きもせず、一方通行は後ろの少女たちに声をかける。 ここにいるのは妹達四人。 学園都市内にいる『妹達』は十人ほどだが、ここに駆けつけられるのは、この病院にいた四人だけだった。 この四人以外の妹達は、現在いる施設からの外出が困難なのだろう。 明日、シスターに記憶が戻った上で会う、と約束した少年のためにも、この場にいる四人でやるしかない。 「確かに俺は一万人以上の妹達をぶっ殺した。だからってな、残り一万を見殺しにしていいはずがねエンだ。ああ綺麗ごとだってのは分かってる、今さらどの口がそンな事言うンだってのは自分でも分かってる」 少女たちはこの白い少年たちのセリフを知っている。 ミサカネットワークを通じて知っている。 自分たちを虫ケラ同然に殺してきた相手が。 たった一人の幼い少女の命を守るために。 無様でも、不恰好でも、場違いでも、不相応でも、何を今さらと罵られたとしても。 それでも、妹達を救った少年のように立ち上がってくれたことを。 命を投げ捨ててでも妹達を守るために立ち上がってくれたことを。 「コイツにも言われたんだ、『精一杯生きているオマエらを食い物にしてんじゃねえ』ってな。だからって訳じゃねエが、俺は、許してもらえるはずがねエと分かってたが、自己満足だって分かってたが、それでもおオマエらを今後一切、絶対に食い物にしねえ、誰の食い物にもさせねえと誓っていたンだ」 妹達は黙って聞いている。 一方通行がそういう思考で動いていたことは知っている。 「だがなア、悪ィが、これから二時間だけ、それを破らせてもらうぜエ」 呟き肩越しに振り返る一方通行。 「テメエらはたった今から一人の人間じゃねエ! この俺に力を与えるためだけの動力源になりやがれ!」 吼えて、四人の返事を聞くことなく、一方通行は、首に巻いてあるチョーカーのスイッチを通常モードから能力使用モードに切り変えた。 制限時間三十分の、学園都市最強のレベル5が降臨する! 「望むところです、とミサカ一九〇九〇号はバッテリー充電用コードを強く握ります」 確かに、一方通行は学習装置の代わりができる。少年の脳に、少年の周りの人たちから集めた、『少年の記憶』を入力することが可能だろう。 それは、八月三十一日に証明されている。 打ち止めからウイルスコードを排除したときに証明されている。 しかし、一方通行は能力使用に制限がある。 現在は電極チョーカーの改良によって、フルパワーでも三十分間なら能力使用が可能となった。 ただし三十分だけだ。 三十分経てば、バッテリーが切れる。能力どころか一方通行自身の全ての機能が停止状態に陥る。 ところが少年の脳に少年の記憶を書き込むのに必要な時間は二時間と算出されている。 しかも、ここは病院だ。いくらカエル顔の医者の病院だからと言っても、学園都市最強のレベル5である一方通行を支えるバッテリー電源を供給しようとすれば、それは他の入院患者や医療機器の放棄を意味する。 そして、学園都市でもっとも安全に作業に集中できる場所がここでもある。ここ以外での長時間作業は好ましくない。 というより、無用なトラブルを確実に持ってくる一方通行が絡んでいる以上、ここ以外の場所ではできない。 では、残りの一時間半はどうするのか。 答えは、これだ。 妹達がバッテリーとなって一方通行を支える。 欠陥電気(レデイオノイズ)、オリジナルである超電磁砲の二万分の一のスペックだとしても、発電系能力者(エレクトロマスター)であることには変わりない。 妹達の発電能力を利用して電極のバッテリー切れを防ぐ、が答えだ。 経験済みとは言え、それでも、これからやろうとしていることは、戦車の砲身にくくりつけたスプーンを操って赤ちゃんに離乳食を食べさせるくらいの曲芸だ。 電子顕微鏡クラスの、精密な電子信号の狂いが一切許されない狂気の沙汰だ。 失敗はそのまま、少年の脳を焼き切り、本当の本物の『死』を与えてしまうものだ。 暴走トラックのブレーキを踏んだところで止められないのと同じように、途中でやめてしまっても、強大で空回りした力が脳に衝撃を与えてしまい、やはり最悪の結末を招いてしまうのだ。 学習装置(テスタメント)であれば、全て機械が行う。プログラムさえ間違っていなければ、決して失敗することは無かった。 だが、その手段は失われた。 残された手段は、一方通行の、学園都市最強の力(ベクトルコントロール)しかなかった。 妹達は少年が記憶を取り戻す、と言ってほしくなかった。 しかし、少年は力強く言った。 記憶を取り戻すと言い切った。 その思いは踏みにじれない。踏みにじってはいけない。 妹達は決意する。 自分たちの命の価値を教えてもらった少年に。 その恩に報いるために少年の命を握る。 それも、唯一無二の、正真正銘の『一度きり』。 失敗は許されない。絶対に許されない。 何が何でも、自分たちの命に代えても成功させる。 「――行くぜ。愉快に素敵にビビらせてやンよ!」 今、妹達の、二時間に渡る死闘が始まる。 開始三十分。 一方通行は既に超精神集中(トランス)状態にある。 超精密作業故、他には構っていられない。 全身全霊をかけて、少年の記憶を入力していく。 学園都市最優等生の秀でた頭脳が、膨大な文章を全て0と1で数値化して入力する。それは日本語だろうと外国語だろうと関係なく。 周りを気にかけるなんてことは不可能だ。 コマンドは『書き込み』。 ここまでは、電極チョーカーのバッテリーで動ける。 ここからは、妹達がバッテリーを支える。 チョーカーから伸びる充電コードを、まずは一九〇九〇号が強く握る。自身の能力の全てをコードに抽出させる。 しかし、 「あぐっ……!」 一九〇九〇号が、まるでロウソクの最後の残り火のように、一瞬、体から火花を散らして、意識を失い、ガタっ!と音を立てて倒れ伏した。 もちろん、即座に次の一三五七七号がバッテリーコードを握る。 バッテリー供給は切れなかった。 それは一方通行のトランス状態が一瞬足りとも途切れなかったことで証明されている。 一九〇九〇号に限界が来た、それだけだ。 それだけなのだが。 「……っ!!」 御坂妹=一〇〇三二号はギョッとした。同時にゾッとした。 なぜなら、一九〇九〇号が力尽きたのは、供給開始わずか五分後だったのである。 それはとりもなおさず、一方通行の、学園都市最強のレベル5を支えるためには、自分たちのスペックがあまりに不足していることを意味していたのだ。 さらに五分が経過し、やはり一三五七七号は倒れ伏す。 この場にいる妹達(シスターズ)は、一〇〇三二号と倒れ伏した二人を含めて四人。 経過時間はまだ四十分。 作業完了までは八十分。 どう考えても足りない。 妹達では絶対に届かない。 休めばある程度回復できるかもしれないが、電池切れを起こした携帯電話を充電させても十五分で満タンにならないように、一人十五分で能力を回復できるはずも無い。 一〇〇三二号の胸の内に『絶望』の二文字が過ぎる。 (どうする、とミサカは焦燥します) 一〇〇三九号がバッテリーコードを握って既に三分が経過した。 実験のときとは違い、『学習』する意味は無い。力の配分や相手の動き云々の話ではないからだ。 今やっていることは、無我夢中で全速力で走り続けることと同じなのだ。 どれくらいの時間を、無我夢中で全速力で走り続けることができるか、という話でしかないのだ。 (学園都市には十人ほどミサカたちはいますが、あと五分の内に集めることはできません、とミサカは至極当然の分析をします) 四分経過。 一〇〇三九号も、表情からは読みにくいが、一〇〇三二号からすればミサカネットワークの中にいる以上、彼女の状態が分かってしまう。 (ミサカにはあの人を救えないのですか。ミサカではあの人になれないのですか) もうすぐ一〇〇三九号も力尽きる寸前だ。 (……って、何を言っているのですか、と、ミサカは自分自身を非難します) 一〇〇三九号の手がバッテリーコードから離れてしまった。 即座に一〇〇三二号がその手に掴む。 (ならば、残り七十五分、ミサカが維持すればいい、と、ミサカは決断します。あの人は、どれだけ傷つこうとも、何度倒れても、その度に起き上がってくれたではありませんか、ミサカのために立ち上がってくれたではありませんか、とミサカは自分を鼓舞します) コードを握る手に、断固たる決意ともに渾身の力を込める。 (ミサカも、あなたのために、決して諦めることなく耐え抜いてみせます、と、ミサカは決意表明します)
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とあるベランダの超電磁砲 第五章 壊れかけた何か~sisters~ 時刻は夜の6時。 上条は銭湯の帰りだ。 小萌先生はまだ学校で、美琴は待っている。 (しっかし、あれは恥ずかしいな) 昼間に美琴を抱きしめたことを思い出していた。 先程も考えていてのぼせかけたのだ 「ん?御坂?」 後ろ姿でよくわからなかったが、美琴らしき人物が路地裏へ入っていくのが見えた。 しかし着ていたのは常盤台中学の制服で頭にもゴーグルらしきものをつけている。 彼女は今、私服を着いるはずだ。 「寮に帰ったのか?いや、今はそんなこと」 とりあえず彼女を追い上条も路地裏へ入っていく。 路地裏は薄暗く、ゴミが散乱し壁も落書きだらけだ。 そろそろ武装無能力者集団も活動を始める頃だろうか。 「御坂のやつ、どこいったんだよ」 いくら超能力者だろうと彼女も女の子だ。 放っておけるわけがない。 あたりを散策していると、ビリビリッ!と聞きなれた音が聞こえた。 しかし普段、彼に向けるよりもも音が小さい。 距離があるのか、威力が低いのか。 (とにかく、行くしかないか) 音のした方へと彼は走っていく。 だんだんと奥へと進んでいき、防犯カメラさえない、一般人が立ちいることなどないような場所だ。 しかし、美琴は見つからない。 「御坂・・・どこだよ」 ふとあたりを見渡すと『美琴らしき人物』が角を曲がるのが見えた。 「御坂!」 上条も彼を追いかけて角を曲がるが・・・・・・ 「なん、なんだよ・・・・・・これ」 何人もの美琴と同じ顔、同じ常盤台中学の制服の少女たち。 そして、その足元に『人間がちょうど入る大きさの黒いビニール袋』という、異様な光景だった。 「実験です。と、ミサカは説明します」 『美琴と同じ顔の少女』の1人が言うが、その声には感情を感じられない。 「じっ・・・けん・・・?」 上条に先ほどとは別の『美琴と同じ顔の人物』が話し出す。 「はい。被験者、一方通行がミサカ達を2万回、2万通りの方法で殺害することで一方通行が絶対能力者になるというものです。と、ミサカ10032号はミサカ10036号に続き答えます」 ミサカ?実験?殺害? 何を言っているんだ。 「そもそも、なんでお前らは何でそんなに御坂に似てるんだよ」 「それはミサカ達がお姉さまのクローンだからです。と、ミサカ10033号は簡潔に回答します」 「クローンって、実験って・・・殺されることを、お前らは何も思わないのかよ!?」 「ミサカたちはお姉さまのDNAマップから製造された、単価18万円であり、」 (DNAマップなんて、簡単に手に入るもんじゃない。じゃあ、御坂は、このことを・・・) 「うっ、うァああぁああ!!」 逃げ出した。怖かった。 殺されることを受け入れ、何も感じない彼女たちが。 そして、それを容認したであろう美琴が・・・ 「はぁ、はぁ」 気がついたら表の通りに出ていた。 (そんなわけねぇだろ。御坂がこんなこと、許すわけねえだろ) 彼は必死に否定する。 普段は自分に電撃を撃ったり、勝負を仕掛けたりするが、 少女趣味で、優しくて、何かに怯え自分に抱きつきてきた彼女を知っているから。 (ここでこうしてたって意味なんかない) とりあえず、小萌先生の家へ帰り、美琴に聞くことにした。 「あの」 「ん?」 そんな時、ベレー帽を被った少女が彼に話しかけてきた。 「助けて、欲しいってわけよ」 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とあるベランダの超電磁砲
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29スレ目ログ ____ ________________ 29-006 ・・・(22-517) 小ネタ 恋人はサンタクロース 29-011 くまのこ(17-598) やらかし都市伝説 29-018 ・・・(22-517) 小ネタ 2016年 29-022 ・・・(22-517) 羽根つき 29-029 くまのこ(17-598) ディスティニー♥オン♥ジ♥柵川 スタンプラリー・デート 29-036 くまのこ(17-598) ※ これは、いやらしい行為ではありません 29-042 くまのこ(17-598) ただのデートじゃ終われない 29-060 ・・・(22-517) 来年も隣で 29-068 ・・・(22-517) 小ネタ 6048523秒 29-070 ・・・(22-517) 小ネタ 苦くて甘い 29-075 くまのこ(17-598) ミコっちゃんのツンデ歴史 29-083 くまのこ(17-598) ネックレスロスのネック 29-090 くまのこ(17-598) とある王様の未来日記 29-097 くまのこ(17-598) ふにゃいた赤鬼 29-102 ・・・(22-517) 気付いた? 29-107 ・・・(22-517) 小ネタ 豆合戦 29-110 ・・・(22-517) 小ネタ しりとり 29-114 くまのこ(17-598) 小ネタ 上条当麻の恋 29-115 くまのこ(17-598) 小ネタ 御坂美琴の夢 29-116 くまのこ(17-598) 小ネタ 上条麻琴の夜 29-119 くまのこ(17-598) ほろ苦いチョコでほろ甘く 29-127 ・・・(22-517) 小ネタ 29-130 ・・・(22-517) 猫の行動の意味 29-137 ・・・(22-517) 小ネタ 雛人形 29-139 ・・・(22-517) 小ネタ 苦 29-144 ・・・(22-517) 3月25日 29-151 ・・・(22-517) 小ネタ いわんでよろしい 29-162 ・・・(22-517) 小ネタ 抱きしめる 29-166 29-165氏 さよなら常盤台 1 29-170 29-165氏 さよなら常盤台 2 29-173 ・・・(22-517) かみ 29-179 29-165氏 さよなら常盤台 3 29-182 29-165氏 さよなら常盤台 4 29-184 29-165氏 さよなら常盤台 5 29-186 29-165氏 さよなら常盤台 6 29-188 29-165氏 さよなら常盤台 7 29-192 29-165氏 さよなら常盤台 8 29-195 29-165氏 さよなら常盤台 9 29-197 29-165氏 さよなら常盤台 10 29-205 29-165氏 さよなら常盤台 11 2章-01 29-207 29-165氏 さよなら常盤台 12 2章-02 29-213 29-165氏 さよなら常盤台 13 2章-03 29-215 29-165氏 さよなら常盤台 14 2章-04 29-218 ・・・(22-517) 日常2 29-225 29-165氏 さよなら常盤台 15 2章-05 29-227 29-165氏 さよなら常盤台 16 2章-06 29-228 29-165氏 さよなら常盤台 17 2章-07 29-229 29-165氏 さよなら常盤台 18 2章-08 29-233 ・・・(22-517) プレゼント希望 29-243 ・・・(22-517) 小ネタ the first mother s day 29-245 29-165氏 さよなら常盤台 19 2章-09 29-250 29-165氏 さよなら常盤台 20 2章-10 29-255 29-165氏 さよなら常盤台 21 3章-01 29-257 29-165氏 さよなら常盤台 22 3章-02 29-260 ・・・(22-517) 今日こそは 29-268 29-165氏 さよなら常盤台 23 3章-03 29-270 29-165氏 さよなら常盤台 24 3章-04 29-274 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 1 第01話 上条当麻(1) 29-277 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 2 第02話 上条当麻(2) 29-279 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 3 第03話 上条当麻(3) 29-281 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 4 第04話 上条当麻(4) 29-283 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 5 第05話 上条当麻(5) 29-287 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 6 第06話 上条当麻(6) 29-288 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 7 第07話 上条当麻(7) 29-291 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 8 第08話 上条当麻(8) 29-293 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 9 第09話 一方通行(1) 29-296 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 10 第10話 一方通行(2) 29-299 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 11 第11話 一方通行(3) 29-304 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 12 第12話 一方通行(4) 29-306 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 13 第13話 幻想殺し(1) 29-309 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 14 第14話 幻想殺し(2) 29-314 29-165氏 さよなら常盤台 25 3章-05 29-321 29-165氏 さよなら常盤台 26 3章-06 29-326 ・・・(22-517) 雨と傘と猫 29-329 ・・・(22-517) 小ネタ 決め台詞 29-332 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 15 第15話 幻想殺し(3) 29-335 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 16 第16話 幻想殺し(4) 29-340 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 17 第17話 幻想殺し(5) 29-343 29-165氏 さよなら常盤台 27 3章-07 29-348 29-165氏 さよなら常盤台 28 3章-08 29-356 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 18 第18話 幻想殺し(6) 29-359 29-165氏 さよなら常盤台 29 3章-09 29-368 29-368氏 学園都市統括理事会 01 第01話 上条美琴(1) 29-372 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 19 第19話 幻想殺し(7) 29-381 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 20 第20話 幻想殺し(8) 29-393 29-368氏 学園都市統括理事会 02 第02話 上条美琴(2) 29-400 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 21 第2部 第01話 第一章開戦前(1) 29-406 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 22 第2部 第02話 第一章開戦前(2) 29-413 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 23 第2部 第03話 第一章開戦前(3) 29-423 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 24 第2部 第04話 第一章開戦前(4) 29-432 ・・・(22-517) 小ネタ the first father s day 29-434 ・・・(22-517) 小ネタ 8月25日 29-437 ・・・(22-517) 海外出張 29-443 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 25 第2部 第05話 第一章開戦前(5) 29-453 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 26 第2部 第06話 第一章開戦前(6) 29-460 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 27 第2部 第07話 第二章(1) 29-468 29-368氏 学園都市統括理事会 03 第03話 上条美琴(3) 29-473 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 28 第2部 第08話 第二章(2) 29-478 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 29 第2部 第09話 第二章(3) 29-486 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 30 第2部 第10話 第二章(4) 29-494 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 31 第2部 第11話 第二章(5) 29-502 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 32 第2部 第12話 第二章(6) 29-510 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 33 第2部 第13話 第三章(1) 29-521 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 34 第2部 第14話 第三章(2) 29-526 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 35 第2部 第15話 第三章(3) 29-531 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 36 第2部 第16話 第三章(4) 29-537 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 37 第2部 第17話 第三章(5) 29-544 我道&くまのこ(25-499) こぼれ話 29 御坂シスターズinロシアこぼれ話(前編) 29-553 29-368氏 学園都市統括理事会 04 第04話 御坂美琴(1) 29-559 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 38 第2部 第18話 第三章(6) 29-566 ・・・(22-517) 今日も佐天は臨機応変 29-572 ・・・(22-517) 本当にあった怖い上琴 29-579 ・・・(22-517) やり直し 29-581 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 39 第2部 第19話 第三章(7) 29-588 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 40 第2部 第20話 第三章(8) 29-595 29-595氏 常盤台防衛作戦 第01話 29-601 ROM専(29-600)氏 佐天さんの能力 29-618 ・・・(22-517) 本気 29-626 29-595氏 常盤台防衛作戦 第02話 29-633 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 41 第3部 第01話 第一章(1) 29-639 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 42 第3部 第02話 第一章(2) 29-646 ・・・(22-517) 育児日記 62 まま 1 29-652 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 43 第3部 第03話 第一章(3) 29-659 ・・・(22-517) 育児日記 63 まま 2 29-666 ・・・(22-517) 育児日記 64 まま 3 29-676 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 44 第3部 第04話 第一章(4) 29-683 ・・・(22-517) 育児日記 65 ただいま 前編 1 29-692 ・・・(22-517) 育児日記 66 ただいま 前編 2 29-701 ・・・(22-517) 育児日記 67 ただいま 前編 3 29-714 ・・・(22-517) 育児日記 68 ただいま 後編 1 29-720 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 45 第3部 第05話 第一章(5) 29-729 ・・・(22-517) 育児日記 69 ただいま 後編 2 29-736 ・・・(22-517) 育児日記 70 ただいま 後編 3 29-749 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 46 第3部 第06話 第二章(1) 29-758 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 47 第3部 第07話 第二章(2) 29-766 ・・・(22-517) 小ネタ ミジカミコト2 29-771 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 48 第3部 第08話 第二章(3) 29-778 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 49 第3部 第09話 第二章(4) 29-785 ・・・(22-517) 罰ゲーム 29-789 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 50 第3部 第10話 第二章(5) 29-799 ・・・(22-517) 日常3 29-807 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 51 第3部 第11話 第三章(1) 29-815 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 52 第3部 第12話 第三章(2) 29-822 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 53 第3部 第13話 第三章(3) 29-829 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 54 第3部 第14話 第三章(4) 29-836 29-836氏 クリスマスの奇跡 01 第01話 29-841 29-836氏 クリスマスの奇跡 02 第02話 29-850 29-836氏 クリスマスの奇跡 03 第03話 29-858 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 55 第3部 第15話 第三章(5) 29-867 29-836氏 クリスマスの奇跡 04 第04話 29-874 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 56 第3部 第16話 第四章(1) 29-883 29-883氏 とある乙女のバレンタインデイ・キス 01 第01話 29-891 29-883氏 とある乙女のバレンタインデイ・キス 02 第02話 29-898 29-883氏 とある乙女のバレンタインデイ・キス 03 第03話 29-906 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 57 第3部 第17話 第四章(2) 29-916 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 58 第3部 第18話 第四章(3) ▲
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前ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/ログ 29スレ目ログ ____ ________________ 29-006 ・・・(22-517) 小ネタ 恋人はサンタクロース 29-011 くまのこ(17-598) やらかし都市伝説 29-018 ・・・(22-517) 小ネタ 2016年 29-022 ・・・(22-517) 羽根つき 29-029 くまのこ(17-598) ディスティニー♥オン♥ジ♥柵川 スタンプラリー・デート 29-036 くまのこ(17-598) ※ これは、いやらしい行為ではありません 29-042 くまのこ(17-598) ただのデートじゃ終われない 29-060 ・・・(22-517) 来年も隣で 29-068 ・・・(22-517) 小ネタ 6048523秒 29-070 ・・・(22-517) 小ネタ 苦くて甘い 29-075 くまのこ(17-598) ミコっちゃんのツンデ歴史 29-083 くまのこ(17-598) ネックレスロスのネック 29-090 くまのこ(17-598) とある王様の未来日記 29-097 くまのこ(17-598) ふにゃいた赤鬼 29-102 ・・・(22-517) 気付いた? 29-107 ・・・(22-517) 小ネタ 豆合戦 29-110 ・・・(22-517) 小ネタ しりとり 29-114 くまのこ(17-598) 小ネタ 上条当麻の恋 29-115 くまのこ(17-598) 小ネタ 御坂美琴の夢 29-116 くまのこ(17-598) 小ネタ 上条麻琴の夜 29-119 くまのこ(17-598) ほろ苦いチョコでほろ甘く 29-127 ・・・(22-517) 小ネタ 29-130 ・・・(22-517) 猫の行動の意味 29-137 ・・・(22-517) 小ネタ 雛人形 29-139 ・・・(22-517) 小ネタ 苦 29-144 ・・・(22-517) 3月25日 29-151 ・・・(22-517) 小ネタ いわんでよろしい 29-162 ・・・(22-517) 小ネタ 抱きしめる 29-166 29-165氏 さよなら常盤台 1 29-170 29-165氏 さよなら常盤台 2 29-173 ・・・(22-517) かみ 29-179 29-165氏 さよなら常盤台 3 29-182 29-165氏 さよなら常盤台 4 29-184 29-165氏 さよなら常盤台 5 29-186 29-165氏 さよなら常盤台 6 29-188 29-165氏 さよなら常盤台 7 29-192 29-165氏 さよなら常盤台 8 29-195 29-165氏 さよなら常盤台 9 29-197 29-165氏 さよなら常盤台 10 29-205 29-165氏 さよなら常盤台 11 2章-01 29-207 29-165氏 さよなら常盤台 12 2章-02 29-213 29-165氏 さよなら常盤台 13 2章-03 29-215 29-165氏 さよなら常盤台 14 2章-04 29-218 ・・・(22-517) 日常2 29-225 29-165氏 さよなら常盤台 15 2章-05 29-227 29-165氏 さよなら常盤台 16 2章-06 29-228 29-165氏 さよなら常盤台 17 2章-07 29-229 29-165氏 さよなら常盤台 18 2章-08 29-233 ・・・(22-517) プレゼント希望 29-243 ・・・(22-517) 小ネタ the first mother s day 29-245 29-165氏 さよなら常盤台 19 2章-09 29-250 29-165氏 さよなら常盤台 20 2章-10 29-255 29-165氏 さよなら常盤台 21 3章-01 29-257 29-165氏 さよなら常盤台 22 3章-02 29-260 ・・・(22-517) 今日こそは 29-268 29-165氏 さよなら常盤台 23 3章-03 29-270 29-165氏 さよなら常盤台 24 3章-04 29-274 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 1 第01話 上条当麻(1) 29-277 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 2 第02話 上条当麻(2) 29-279 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 3 第03話 上条当麻(3) 29-281 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 4 第04話 上条当麻(4) 29-283 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 5 第05話 上条当麻(5) 29-287 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 6 第06話 上条当麻(6) 29-288 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 7 第07話 上条当麻(7) 29-291 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 8 第08話 上条当麻(8) 29-293 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 9 第09話 一方通行(1) 29-296 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 10 第10話 一方通行(2) 29-299 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 11 第11話 一方通行(3) 29-304 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 12 第12話 一方通行(4) 29-306 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 13 第13話 幻想殺し(1) 29-309 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 14 第14話 幻想殺し(2) 29-314 29-165氏 さよなら常盤台 25 3章-05 29-321 29-165氏 さよなら常盤台 26 3章-06 29-326 ・・・(22-517) 雨と傘と猫 29-329 ・・・(22-517) 小ネタ 決め台詞 29-332 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 15 第15話 幻想殺し(3) 29-335 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 16 第16話 幻想殺し(4) 29-340 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 17 第17話 幻想殺し(5) 29-343 29-165氏 さよなら常盤台 27 3章-07 29-348 29-165氏 さよなら常盤台 28 3章-08 29-356 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 18 第18話 幻想殺し(6) 29-359 29-165氏 さよなら常盤台 29 3章-09 29-368 29-368氏 学園都市統括理事会 01 第01話 上条美琴(1) 29-372 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 19 第19話 幻想殺し(7) 29-381 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 20 第20話 幻想殺し(8) 29-393 29-368氏 学園都市統括理事会 02 第02話 上条美琴(2) 29-400 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 21 第2部 第01話 第一章開戦前(1) 29-406 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 22 第2部 第02話 第一章開戦前(2) 29-413 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 23 第2部 第03話 第一章開戦前(3) 29-423 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 24 第2部 第04話 第一章開戦前(4) 29-432 ・・・(22-517) 小ネタ the first father s day 29-434 ・・・(22-517) 小ネタ 8月25日 29-437 ・・・(22-517) 海外出張 29-443 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 25 第2部 第05話 第一章開戦前(5) 29-453 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 26 第2部 第06話 第一章開戦前(6) 29-460 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 27 第2部 第07話 第二章(1) 29-468 29-368氏 学園都市統括理事会 03 第03話 上条美琴(3) 29-473 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 28 第2部 第08話 第二章(2) 29-478 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 29 第2部 第09話 第二章(3) 29-486 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 30 第2部 第10話 第二章(4) 29-494 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 31 第2部 第11話 第二章(5) 29-502 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 32 第2部 第12話 第二章(6) 29-510 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 33 第2部 第13話 第三章(1) 29-521 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 34 第2部 第14話 第三章(2) 29-526 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 35 第2部 第15話 第三章(3) 29-531 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 36 第2部 第16話 第三章(4) 29-537 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 37 第2部 第17話 第三章(5) 29-544 我道&くまのこ(25-499) こぼれ話 29 御坂シスターズinロシアこぼれ話(前編) 29-553 29-368氏 学園都市統括理事会 04 第04話 御坂美琴(1) 29-559 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 38 第2部 第18話 第三章(6) 29-566 ・・・(22-517) 今日も佐天は臨機応変 29-572 ・・・(22-517) 本当にあった怖い上琴 29-579 ・・・(22-517) やり直し 29-581 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 39 第2部 第19話 第三章(7) 29-588 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 40 第2部 第20話 第三章(8) 29-595 29-595氏 常盤台防衛作戦 第01話 29-601 ROM専(29-600)氏 佐天さんの能力 29-618 ・・・(22-517) 本気 29-626 29-595氏 常盤台防衛作戦 第02話 29-633 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 41 第3部 第01話 第一章(1) 29-639 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 42 第3部 第02話 第一章(2) 29-646 ・・・(22-517) 育児日記 62 まま 1 29-652 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 43 第3部 第03話 第一章(3) 29-659 ・・・(22-517) 育児日記 63 まま 2 29-666 ・・・(22-517) 育児日記 64 まま 3 29-676 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 44 第3部 第04話 第一章(4) 29-683 ・・・(22-517) 育児日記 65 ただいま 前編 1 29-692 ・・・(22-517) 育児日記 66 ただいま 前編 2 29-701 ・・・(22-517) 育児日記 67 ただいま 前編 3 29-714 ・・・(22-517) 育児日記 68 ただいま 後編 1 29-720 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 45 第3部 第05話 第一章(5) 29-729 ・・・(22-517) 育児日記 69 ただいま 後編 2 29-736 ・・・(22-517) 育児日記 70 ただいま 後編 3 29-749 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 46 第3部 第06話 第二章(1) 29-758 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 47 第3部 第07話 第二章(2) 29-766 ・・・(22-517) 小ネタ ミジカミコト2 29-771 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 48 第3部 第08話 第二章(3) 29-778 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 49 第3部 第09話 第二章(4) 29-785 ・・・(22-517) 罰ゲーム 29-789 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 50 第3部 第10話 第二章(5) 29-799 ・・・(22-517) 日常3 29-807 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 51 第3部 第11話 第三章(1) 29-815 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 52 第3部 第12話 第三章(2) 29-822 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 53 第3部 第13話 第三章(3) 29-829 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 54 第3部 第14話 第三章(4) 29-836 29-836氏 クリスマスの奇跡 01 第01話 29-841 29-836氏 クリスマスの奇跡 02 第02話 29-850 29-836氏 クリスマスの奇跡 03 第03話 29-858 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 55 第3部 第15話 第三章(5) 29-867 29-836氏 クリスマスの奇跡 04 第04話 29-874 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 56 第3部 第16話 第四章(1) 29-883 29-883氏 とある乙女のバレンタインデイ・キス 01 第01話 29-891 29-883氏 とある乙女のバレンタインデイ・キス 02 第02話 29-898 29-883氏 とある乙女のバレンタインデイ・キス 03 第03話 29-906 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 57 第3部 第17話 第四章(2) 29-916 29-274氏 とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン) 58 第3部 第18話 第四章(3) ▲ 編集 Back
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とある少年の泥酔騒動 1 「それでは乾杯!!!」「いやーどもども」「………なンで俺が」とある居酒屋の一角にて、3人の少年が杯を交わしている。一人はツンツン頭の不幸そうな顔をした少年。その隣に座っているのが茶髪のいかにもチンピラという格好をした少年。そしてツンツン頭の少年向かいに座るのは色の抜けた白い髪、凄みのある紅い瞳を持つ少年がいた。「…かぁ~~やっぱうめえ!!」「俺にはまだビールの良さが分かんないな。やっぱ人付き合いのために飲めたほうがいいよな~」「大将はそのうちキャバクラとかでハーレム作ってそうだな」「なんで?その手の話とは無縁だぞ」「そりゃー謙遜にも程があるって」「………」「んなこと言ったら今、浜面も意外とハーレムじゃね」「いや、あいにく俺は滝壺一筋だかんね。……他はありえないし」「…てか麦野さん?だっけ。その人が俺の殺害依頼に乗り気だったのはマジ?」「マジ。まあ第1位が敗北したから超能力者に頼るのは止め、って話にはなったな」「………ふン」「いや~最初に一方通行と戦うのは正直ビビったけどそれが一番良かったんだな」「大将が勝ったんだよな?」「ああ。つってもあの手加減にはそういう意味があったのか、納得」「チッ」「え、どゆこと?」「まあ俺が勝ちを譲ってもらったってことだな。でも他に手はなかったのか?あのあとすげー腫れたんだぞあれ」「贅沢言ってンじゃねェよ。てめェが五体満足なだけ俺に感謝しやがれ」「まあ確かに大将はこの通り無事に帰ってきてる訳だし!」と一言言ってビールを流し込む茶髪の少年こと浜面仕上。それを不思議そうに眺めている不幸な少年、上条当麻はちょっと大人の世界に背伸びしてみたくなるものだった。「苦くない?」「ん~まあ最初は苦いと思ったな。ビールはさ、飲み方があんだよ。舌につけないように喉に流し込む、これがのどごしを感じるってやつだな」「ふーん」「ま、今日は大将の帰還を祝ってるわけだからさ、グイっとな!!」「へ?いやいやいきなりジョッキは無理でしょ!!」「…クソ不味ィ」ワイワイ騒ぐ2人(もう1人はずっとしかめっ面)。店内には多くの客がおり、夜はいけないテンションで更けていく…………… ありがとうございましたー店内から出た3人の少年たち。人が多くてバカ騒ぎしても気にならず、店長もユルユルだったため、気兼ねなく最初から最後まで楽しめたといっていい。とくに邪魔もはいらず満喫でき、これからどうするのかと思うが、まず不幸な少年・上条当麻はこう言った。「はまぶらべろぶろべらじゃん?」「…………なぜこうなった」ぼそっと浜面は呟いた。浜面はすっかり泥酔してしまった上条とまったく動かない一方通行の対処に頭を悩ませていた。黙ってビールを飲んでいた一方通行が突然チョーカーのスイッチを入れたことには、はしゃいでいた二人共青くなったが一方通行は大人しいままだった。そしてその後はアルコールの含まれているものには一切手をつけなかった。そして30分後………突然一方通行は横に倒れ、その後モゾモゾ動いていた。どうやら体内のベクトルを操作してアルコール成分について対処していたらしく、且つ2人には男同士の見栄によって言えないためにバッテリーが切れるまで能力を行使していたのだ。「どーすんだよこの状況!!!てか酒に対して能力なんか使ってんじゃねーよ!あっこら勝手に離れるんじゃありません!!!」「うぃーーーー」「大将を一人にするのは危険…なのか?いやでも酔ったきっかけは俺だしなあ」「おい、しろいの。のっくだうんですかぁ?」「うるせーなお前は!!!今ない頭で必死に考えてんだからおとなしくしてろ!!!」「のおォォっくだああァァうンですかァァああ?」「ああもう似てねーよ!!!!頼むから静かにしてて……」いつものアイテムに対する対応をしてしまう浜面仕上。解決の糸口は見つからず、完全下校時間などはとうの昔に過ぎている。と、そこに一人の少女が通りかかった。「あれ?アンタは」ん?とげんなりした顔を上げる浜面。そこには何度か面識のある常盤台中学の超電磁砲こと、御坂美琴が立っていた。(この娘は確かハーレムの時にいた…)「ん?…げ!!またお酒を飲んだの!!」「んんんんあ?あれえミコっちゃんじゃないの~」いくつもの修羅場を乗り越えてきた世紀末帝王HAMADURAは率直にこう思った。(チャンス!!!!!)「よし、君には大将を任せる!!家にお持ち帰りするなり、そこらの公園でイチャコラするなりなんなりとせよ!!!!!!!!!!!」クワッッ!!と目を見開き腰に手を当て美琴に指をさす浜面。急に言われたトンデモ発言によって美琴の周りの空気が一瞬にして固まる。「え!!??ちょ、ちょっと待って!私にも心の準備があるとかあのその!!!!!!」「ミコっちゃん~」「ひゃい!!宜しくお願いします!!!!」「さらばだあああああ!!!!!!」古いアニメの悪役のように一方通行を担いで全力ダッシュで逃げる浜面。後に残されたのは「14月は何ヶ月後だ???」とか言ってふらふらしている上条と、空を掴んでいる美琴だけだ。 「…てか冷静に考えれば家に送りゃいいだけの話だったわね」「うい」「はあ、なんで私がこんな事を」とか言って嬉しかったりする複雑な乙女心。ちょっとニヤけそうになっているのを見られないように上条に対してそっぽ向いて歩く。しかし上条にはそんな乙女心はわからないため美琴が自分のことで怒っていると勘違いしてしまった。「……ミコっちゃん」「なによ。あとミコっちゃん言うな」「抱きしめたら許してくれる?」今コイツはなんて言った?と歩くのをやめ、再び固まる美琴。それをなぜかOKサインと受けとった上条は「うだあああああ~」「うにゃああああああああ!!!!!!!!!」思いっきり後ろから抱きしめた。耳元に吐息付きで。「は、はははにゃれにゃさいにょ!!!!!!」「ミコっちゃんってうべだばだああーー」「くっ!!この!!!!」「か弱い女の子にゃむりい~はなさねえぞおお」再び固まる美琴。(いま、か弱い女の子って言った?しかも離さないってっ!!!)なんてことを頭の中で反芻しているうちに「ふ、、」「ふ???」「ふ、ふにゃ」ああもう駄目だと覚悟する美琴に対して上条は「おっと、その手には乗りませんのことよおお!!!はむっ」「……ぎにゃあああ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!」美琴の首筋を甘噛みしやがったのだッッッッ!!!!!「まだ許してもらってないもんね~」「も、もう…許して………」もはや美琴は度重なる異常事態に涙目である。嬉しいのは嬉しいんだがあまりにも過激すぎたのだ。「うんいーよ。…ってあれ?立場逆じゃね?」「こ、これ以上は、ほんと無理……」「これ以上ってなに?」「ふえっ!!」「お持ち帰り?夜の公園?」「」「いやちがうな。お持ち帰り、しろいの、あくせられーた……」「」「…あ、そーだ!もやし買って帰らないと!!!」「」「んで野菜炒めでも作るか~ってあれ?いま飯食ったっけ?」「」「まあいいかあ、どーせ穀潰しがいるし。そだ、ミコっちゃんもくるっしょ?」「」「おーいもしもし」「」「んじゃ決定ね。おっ持ち帰りい♪おっ持ち帰りい♪」不穏なワードを鼻歌交じりで歌っていることに気づけないのかこの馬鹿は?そもそも何してたんだっけという目的を完全に忘れ、完全に意識の途絶えた美琴をおんぶしてデパートに向かう。これから起きる、測り知れない騒動を予期せずにッッ!!-To be continue?-